ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

即時解雇の手続きと注意点

2023-09-03 16:59:08 | 労務情報

 従業員をその責めに帰すべき事由(例えば、社内での犯罪行為、会社の名誉や信用を著しく失墜させる社外での犯罪行為、2週間以上に及ぶ無断欠勤など)に基づいて解雇する場合、解雇予告または解雇予告手当の支払いは必要でない(労働基準法第20条第1項但し書き後段)が、そのためには行政官庁の認定を受けなければならない(同条第3項)。

 具体的には、事業所を管轄する労働基準監督署に以下の書類を提出して、解雇予告除外を認定してもらうことになる。
  (1) 解雇予告除外認定申請書 [様式第3号]
  (2) 労働者の生年月日、雇入年月日、職種(名)、住所、連絡先等が明らかになる資料
    (一般的には「被申請労働者の労働者名簿」)
  (3) 申請に係る「労働者の責に帰すべき事由」が明確となる疎明資料
   ① 事由の経緯について時系列に取りまとめた資料
   ② 本人の自認書・顛末書等
   ③ 懲罰委員会など懲戒処分関係の会議の議事録
   ④ 新聞等で報道された場合は、その記事の写し
  (4) 就業規則(解雇・懲戒解雇等の該当部分)
  (5) 解雇通知をしている場合は、解雇予告日及び解雇日が分かる書面
 この手順を踏まずに会社の判断で即時解雇すると、労働基準法第20条第1項本文に違反し、6箇月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる可能性がある(同法第119条)。

 解雇予告除外が認定されたなら、解雇の効力は即時解雇の意思表示をした日に遡って発生する(昭63.3.14基発150号)。
 しかし、労働基準監督署が必ずしも認定してくれると限らない以上、認定前に即時解雇するのはリスクが高いので、もし当該従業員を出社させたくない事情が存在するのなら、自宅待機(通常の賃金が発生)または休業(平均賃金6割以上の休業手当支払いが必要)させたうえで、解雇予告除外認定手続きを進めるのが間違いないだろう。

 また、解雇予告除外認定を受けたとしても、それは解雇の正当性を保障するものではない。 民事訴訟を起こされ解雇の当否を争われる余地は残っているのだ。

 加えて、業務災害による休業後30日間または産休後30日間は解雇が制限される(同法第19条第1項)ことにも気を付けたい。
 もっとも、解雇予告除外認定を申請しても、労働基準監督署はこの期間を経過した後でないと認定してくれないので、自ずと即時解雇できないことにはなる。

 即時解雇は、あまり喜ばしい事ではないが、もし必要な事態が生じたら、正しい手続きにより毅然と対応したい。


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