自社の従業員が退職代行業者(本人に代わって退職の意思表示や退職手続きをしてくれる業者;労働組合や弁護士であるケースも含む)を利用して退職しようとした際、会社はどう対処したらよいだろうか。
まず、経営者としては、この段階まで来たら、その退職を引き留めることはできないと認識しなければなるまい。
そもそも退職すること自体が本人の自由であるのだし、加えて、退職代行業者を利用するのは、「会社が退職させてくれない」「職場でハラスメントを受けている」等の事情があるからであって、つまるところ「会社が信用できない」との意思表示とも言えるからだ。
ただし、当該従業員に関して懲戒解雇に該当する事由が生じている場合は、自己都合での退職を認めるべきではないので、それだけは気を付けたい。
そして、本人に連絡が取れるなら直接、本人が会社からの接触を拒否しているなら当該退職代行業者を介して、本人自筆の退職届(「退職“願”」はこのケースではそぐわない)を提出させる。 同僚や家族が本人になりすまして退職代行業者に依頼していることも考えられないではないので、必ず本人の意思を確認し、書面で残しておくべきだ。
退職届が提出されたなら、後は、通常の退職手続きを淡々と進めるだけだ。
有給休暇の消化を要求されたなら退職日までの間で取らせ、健康保険証や会社からの貸与物等を返還させ、失業給付を受ける予定の者には離職票交付を手配する。 最後の給与や退職金の支払い等も通常の退職者と同様に取り扱う。
ちなみに、退職代行業者を利用したことは、こうした手続き面で不利益に取り扱うべき理由にはなりえない。 業務引継ぎに支障があった(実際そうなるケースが大多数と思われる)等により会社が現実に損害を被った場合はその賠償を請求することが可能だが、その場合でも、損害額を給与や退職金から勝手に控除することは許されない。
その一方で、当該従業員が退職する意思を固めた理由や、それを会社に直接示さなかった(示せなかった)ことについて、社内でしっかり検証するべきだ。
事情によっては、退職者から訴訟を提起されることも想定しておかなければならないだろう。また、上司の評価や処遇を見直したり、職場全体の悪習を洗い出したりする必要があるかもしれない。
会社としては退職代行業者を利用されたことへの不快感はあろうが、どちらかと言えば非は会社にある(ことが多い)のだから、むしろ猛省を促したいところだ。
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