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「ハローワーク別地域指数」記載誤りは全国・全業種に影響

2024-08-13 09:08:17 | 労務情報

 厚生労働省は、昨年8月に公表した「ハローワーク別地域指数」の一部(全434所のうち、神奈川・山梨・長野・新潟以西の275所)に誤りがあることを発表した。
 これは、全国のハローワークの所管地域ごとに「一般労働者の賃金の水準(一般賃金水準)」を示したもので、派遣労働者にとって実質的な“最低賃金”に相当する。
  【参考】職業安定局需給調整事業課報道発表(令和6年5月24日)

 では、ここで、派遣労働者の待遇決定方式について、改めて確認しておこう。
 いわゆる「同一労働同一賃金」の観点から、派遣労働者も派遣先(派遣労働者を受け入れる事業所)の労働者と不合理な待遇格差があってはならない(労働者派遣法第30条の3)。 これは必ずしも“均等”でなくてもよいが、“均衡”の取れた待遇が求められている。
 しかし、この「派遣先均等・均衡方式」により派遣労働者の待遇を決定することにすると、派遣先は自社従業員の賃金等に関する情報を派遣元(派遣会社)に提供しなければならず、また、派遣労働者本人にとっても派遣先が変わるたびに待遇が見直されるという不合理が生じる。
 そのため、9割近くの派遣元では、同法第30条の4の規定に基づき、過半数労働組合または過半数労働者代表との「労使協定」により待遇を決定しているのが現状だ。
  【参考】労働政策審議会資料『労使協定書の賃金等の記載状況について』(P.1)

 この「労使協定方式」により派遣労働者の待遇を決定するには、「厚生労働省令で同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額として定める額以上の賃金とする」等の基準が設けられている。

 今般、その金額に誤りがあったということなので、訂正後の(正しい)一般賃金水準に満たない労使協定を締結している派遣元では、新たな協定を締結して(経過措置期間は今年9月30日まで)賃金額を引き上げ、加えて、今年4月から新協定発効までの間の賃金差額を補うことを労使で検討しなければならない。

 こうした派遣元事業主に対し、厚生労働省は現在、雇用保険二事業により支援する方向で検討している。
 具体的には、「人材確保等支援助成金」の下に時限措置として、①賃金制度の整備に係る基本経費として5万円、②雇用する派遣労働者1人当たり1万円、③(①②の合計額を超えざるを得ない場合)実費、を助成する案が示されている。

 それにしても、この原資は雇用保険料の事業主負担分から賄われるということだから、今般の行政の不始末は、派遣元・派遣先だけでなく、また、地域も問わず、すべての事業所に影響が及ぶと言えよう。


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