昨今の売り手市場を反映してか、一部の企業には社員寮を充実させてリクルーティングの武器にしようという動きが見られる。
1990年以降、バブル崩壊・景気低迷を受けて社員寮は縮小傾向にあったが、それがここへ来て見直されているのだ。
ただし、社員寮を有することには、メリットもあればデメリットもある。
【主なメリット】
(1) 賃金の一部を補填する性格を持つ
(2) セキュリティ面で安心感を与えられる
(3) 緊急事態(急病や負傷)に際して寮生同士が助け合える
(4) 新卒(特に地方出身学生)採用活動に有利な材料となる
(5) 会社への帰属意識を高められる
【主なデメリット】
(1) 維持コストがかかる
(2) 私生活への干渉が、寮生にとっては煩わしく、会社にとっても負担となる
(3) 寮内の人間関係を仕事に持ち込むことがある(これはメリットでもある)
(4) 退寮に際してトラブルが生じるケースがある
(5) 入寮できる者とできない者との間に不公平感が生じる
(6) 廃止するのが難しい
デメリット(6)に関しては、特に社員寮を自社で所有している場合、他の用途に転用して有効活用したくてもなかなかできないもどかしさを、会社は感じるかも知れない。
ちなみに、社員寮を廃止する場合、当然、寮生には退寮してもらうことになる。
それは労働条件の不利益変更に他ならないので、該当者を説得して退寮に同意してもらう(同意書等の書面に残す)ことを第一に考えたい。代替措置(明け渡しの猶予、引越し費用の会社負担、当面の住宅手当支給等)を用意する必要もあるだろう。
そして、これに応じない寮生に対しては、就業規則の変更による不利益変更(労働契約法第10条)に踏み切るしかないが、訴訟に発展した場合に裁判所がどう判断するか、リスクがある。
福利厚生制度すべてに共通する話ではあるが、制度や設備を導入するよりも、それらを廃止するのは、より多くの労力と費用と時間を要する。
そういった点も踏まえて、「リクルーティングに有利」という理由だけで安易に社員寮の設置に飛びつくことのないようにしたい。
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