声の仕事とスローライフ

ただ今、仕事と趣味との半スローライフ実践中。遠方の知人友人への近況報告と、忘れっぽい自分のためのWeb忘備録です。

病棟のアイドル

2018-12-05 16:51:57 | Diary
病棟のナースステーションの前の丸テーブルで

いつも歌ってるおばあちゃんがいる。

小さくて背中の曲がった可愛いおばあちゃんだ。


“アイコさん”と誰かが呼んでいた。


アイコさんは歌が上手だ。


まるで少女のような細くて優しいソプラノで毎日何曲も歌い続ける。

十八番は「緑のそよ風」「仰げば尊し」、
時には「山のロザリオ」や「琵琶湖周遊の歌」まで、

「高校三年生」や「こんにちは赤ちゃん」
も歌い始めるが、

流行歌は苦手らしく滅多に歌わない。



アイコさんの声には童謡がよく合う。

「お歌上手ですね!」

褒めると、
可愛らしい顔をクシャクシャにして

「そ〜お、ありがとう!」

と、笑う。

「小学校、中学校、高校で習ったのよ!」
と嬉しそうに答えた。

認知症があるようだが、

アイコさんの丸テーブルの周りには、

他の患者たちが集まって折り紙をしたり、塗り絵をしたり、

同年輩の男性患者たちも、一緒にご飯を食べたりして賑やかだ。

きっと誰からも、アイコさんは愛されているのだろう。


ふと、実母が認知症で施設に入っていた頃を思い出した。

残念ながら実母は、いつも不機嫌な顔をしていた。

元気な頃は、歌をうたうこともあったが、
認知症になってからは、滅多に歌わなくなった。


アイコさんが、一般病棟で過ごせる期間は限られているに違いない。


私は、入院してからというもの毎日アイコさんの歌を聞いているが、

アイコさんの歌声に癒されている。


今日は、私自身のリハビリを兼ねてアイコさんと2人で「山のロザリオ」を唄った。


この病院を出ても、

アイコさんが歌い続けられる環境があればいいのだけれど…。


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