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午前3時、
まるで目覚ましをセットしているかのように
Halは起き上がる…
正確に言うと起きあがろうとする。
何度も生まれたばかりの子牛のように後ろ脚を踏ん張って立ちあがろうとするが、
もはや自分の力では立ち上がれない。
それを私はハーネスで支えてやり立ち上がらせる。
立ち上がってから、ゆっくり歩いて玄関に向かう。
外は寒いが、
Halはどうしても外で用を足そうとする。
マナーベルトを外してやると玄関の段差で躊躇して頭を下げてジッとしている。
上り框に飛び降りることができないのだ。
それをまたハーネスで支えてやりながら
「ピョーン」と声をかける。
Halは自分で飛んで降りているようなつもりで、
玄関のたたきに降りる。
外に出ると流石に寒さが堪えるのか、4、5歩、よたよたと歩いたところで用を足す。
脚が思うように動かないので最近は徘徊もできないらしく、
終わるとUターンして、
玄関に戻ろうとするが、逆コースでは玄関の段差が超えられない。
目がよく見えないのだ。
「ジャーンプ!」と声かけしてHalの身体をハーネスで持ち上げる。
するとHalは、自分の力で飛んだ気になるらしい。
玄関からリビングに通じるガラスのドアを開けてやると、
自分でそそくさとベッドのある場所に帰って行くのだが、
今夜は、いつものベッドがない。
昨日は私の留守中に、
朝食べさせたペースト状の腎臓サポート食をベッドに戻してしまったらしい。
夫が大騒ぎして片付けたというベッドがベランダに干してあった。
いつものベッドの代わりに座布団を組み合わせて毛布をかけてやった場所に
Halは当たり前のように再び伏せてウトウトし始める。
前足の肉球を触ると冷たい。
耳もひんやりしている。
薄目を開けて私を見るHalに話しかける。
(がんばってるね)
(オシッコ出てよかったね)
(まだ大丈夫だよね)
私が以前着ていたダウンコートを掛けてやり、
身体をさすってやると静かに寝息を立て始めた。
Halが我が家に来た頃に、よく口ずさんだ子守唄風のフレーズを繰り返す。
(ねんねこっこ Halちゃん…ねんねこっこ Halちゃん…)
Halは薄目を開けて見ている。
(やめてくれよ…おいらオッサンだぜ)
と言っているようにも思える。
Halは、やっぱり硬派のイケメンだと思う瞬間だ。
Halの額にオデコを当てて
(愛してるよ、大好きだよ)
と囁く。
人間には絶対に言えない言葉が、自然に口について出てくる。
小太郎のときもロメオのときもそうだった…ことを思い出す。
本当の愛とは代償を求めないものだ。
動物は代償を求めないから愛おしい。
それだけに自然に「愛してる」と言えるのだ…と私は思う。
病みし犬の寝息に安らぐ極寒の夜