8月15日は、台風の影響で朝から雨。
祭壇には、従弟と従妹の遺影がお雛様のように並んでいた…
優しそうに微笑んでいる従弟の遺影に使われた写真は、
5年前の伯母の十三回忌の時に私がスマホで撮って送った集合写真を使ったのだと、
相次いで弟と妹を亡くした彼らの長兄が話した。
昨年末の従弟の葬儀の日は大雪で交通機関が全てストップしたため、駆けつけることができなかった。
今回は台風で、どうなるかと思ったが、
幸いにも大した渋滞にも遭わずに来ることができた。
伯母の子供は3人いるが、次男と長女が亡くなり、2人とも独身だったため、
長兄とその妻が葬儀を仕切った。
従妹の異変に最初に気づいたのも、長兄の妻だった。
彼女は昨年末に亡くなった次男の菜園を引き継いで管理してくれていた。
その長兄の妻から、
「亡くなった当日の日記があったんです」と見せられたのは、
ノートにびっしりと小さな癖字の、ボールペンで記された従妹の日記だった…
そこに記されたのは、他愛のない日常そのものだった。
『2匹の猫たちがケンカして困る…』
『レモンケーキを作ってみたがマーガリンが強すぎて失敗、次はマーガリンを加減して再挑戦してみよう…』
彼女はプロのパティシエを養成する学校を出てお菓子作りを仕事にしていた。
そして、最後の方に、
『今夜はレコードを聴きまくる…』とあった。
何を聴いていたのだろう、とプレーヤーにかかったままのレコードを見ると、
そこにあったのは、さだまさしの《夢供養》だった…
体調が悪いなんて事はどこを探しても書かれていなかった。
充実した1日を過ごしていたのだ。
明日も普通に来ると思いながら書いたに違いない。
山間の小さな集落でネット環境が悪くスマホが通じにくい…
体調が急変した時に、すぐ電話する事はできなかったのか…?
死とは、こんなに突然やってくるものなのだろうか…
帰りの車の中で、
ずっと従妹の遺した日記のことを考えた。
明日は必ず来るとは限らないのだ。
従妹が可愛がっていた2匹の猫たちは、長兄のところで暮らすことになった。
往復で2200km、途中何箇所かで事故車両や故障車を見かけたものの、
無事に走り終えることができた。
今朝もいつも通り5:15に目が覚めた。
身体のどこにも痛みがない。
きっと、見守ってくれたのだ。
ありがたい。