帰宅するとリビングにいた夫が
「どうだった?」
と訊いてきた。
「あなたも来ればよかったのに…」
と言うと、
「咳が出ると止まらなくなるんじゃダメだよ」
確かに、
普通の風邪ならとっくに治っているけれど、
熱も下がっているのに百日咳か季節性の喘息かと思えるほど咳が止まらない…
1人で出かけたのは、そんなやむを得ない事情からだ。
土曜午後4時と言う開演時間は中途半端な時間だが、
これも中高年層がほぼ100%の観客に合わせたのだろうか…
夫の大学の1年先輩だと聞いているし、
私がかつて勤務していた四国の放送局に
同級生だという広島出身の女性アナウンサーがいて、
ツイストがメジャーになる前のことはよく聞いていた…
直接、アーティストご本人との接点はないのに、
何故かその周囲の人たちとの接点があるという不思議な巡り合わせだ…
昔話はさておき、
ファンでもない私が、わざわざ車で1時間かけて聴きに行こうと思ったのは、
朝ドラで久々に聞いたJAZZスタンダードの歌の上手さに惹かれたことと、
このところの自分自身の停滞感に外部からの刺激で喝を入れたかったからだ。
昨夕のLIVEは、その期待を裏切らないもので、
私は同世代のアーティストのパフォーマンスに大いに刺激を受けた。
2時間、水も飲まず歌いっぱなし…
新旧のナンバーを織り交ぜ、
アンコール2曲を含めて全部で20曲くらいだったか…
随所で朝ドラ出演時のエピソードや、
他の有名アーティストたちとの交流話も入れつつトークでも楽しませてくれた。
なんと言っても、
ギターを掻き鳴らす度にピックが割れてしまうほどの迫力と、
それに負けない声量には驚く。
声も艶やかで、低音も高音も張りがある…相当、鍛えていると見た。
アコースティックLIVEだから、しっとり系かと勝手に想像していたが、
オープニングの2曲からバリバリのロックだったのには度肝を抜かれた。
中高年の観客が100%近いLIVEでは、
新曲より古いヒット曲の方が受ける…
知っている曲を演奏することも観客の満足度を上げるためのポイントだ。
最初のトークで
『アップデートして帰ってくださいね!』
なんて言ってたから、古い曲は演らないのかな?
と、半ば諦めかけていたとき、
『宿無し』の聞き覚えのあるイントロが…
(もう一曲くらい聴きたいなぁ)
と思っていた中間で『あんたのバラード』
続いて、朝ドラ出演時に歌われた『On the sunny side of the street』
後半に入って
『銃爪』
そしてアンコールの2曲目で
『燃えろいい女』
…とタイミングよく古い曲が入る…
途中で助っ人のギタリストとのセッションもあり、
古い曲も、新しいアレンジで歌い聞かせてくれた。
チューニング中もさりげなく世間話を始める…
気負いが全くなく、それなのに演奏が始まると、ここぞとばかり盛り上がる…
なるほど…
よく計算されたLIVEだなぁ…と感心。
『あんたのバラード』のアコースティックバージョンは、
YouTubeで聴いたのより、アーティキュレーションが細やかで聞きごたえがあった。
これは、もう一度、生で聴いてみたい。
オープニングトークの
「アップデート」の意味するものとは
こう言う事だったんだな。
中高年になるとアップデートは難しい。
例えば、仕事もそうだ。
昨日読んだニュース記事にもあったが、
60代の管理職が少ないのが日本企業の特徴で、
その原因が50代での役職定年制にあると言う。
役職定年が来ると、一気に仕事に対するモチベーションが下がり、
ただ同じ会社に通って日がな一日、何をするわけでもなく時間を持て余す…
そんな60代も多い。
中高年は、急には変われない。
転職しようにも年齢の壁が立ちはだかるし、生き方を変えるのは難しい…
そうは言っても、
いつまでも過去に囚われていては、前に進めない。
世良氏の言うアップデートとは、
これまでの自分の生き方や仕事をベースにして進化し続ける事だ。
浮き沈みの激しい芸能界を生き抜いて来た経験から生まれた言葉だろう。
確かに見かけも若々しい…
だけど、私の目には、
なぜか、タレントの中山秀征さんそっくりに見えた。
髪型のせいか…な?