町田営業所業務日報

地元周辺の鉄道・バス車両について気紛れに綴ります。

関東地方初の量産型VVVFインバーター制御電車、新京成8800形

2021年10月09日 | 京成グループの鉄道

新京成電鉄は、千葉県北西部の松戸〜京成津田沼間26.5キロを結ぶ関東地方では唯一の準大手私鉄です。戦後に旧陸軍鉄道連隊演習線跡地の払い下げを京成電鉄が受けて旅客鉄道に改修し、国からの補助を受けつつ本社の決定を仰がず沿線開発を円滑に進めるなどの思惑から自社とは切り離して運用するため「下総電鉄」として設立していましたが、これを新京成電鉄に改称して始まりました。その設立の経緯から親会社である京成との繋がりは深く、かつては譲渡車も存在しましたが1970年代から京成車とは一線を画した独自設計の車両を導入するようになり、1986年には非冷房・吊り掛け駆動の旧型車置き換え用に8800形が登場しますが、関東地方の直流1500ボルト鉄道路線では初のVVVFインバーター制御を採用し量産され、大変な注目を集めました。

8800形のトップナンバーである8801編成。登場から2006年までは8両編成12本の陣容でしたが、京成千葉線への乗り入れ開始に伴い6両編成16本への組み替え工事を実施することになり、工事後の直通対応編成には誘導無線・急行灯が設置されています。8801編成は2006年11月11日に新京成電鉄の新造車では初めて京成線内に試運転で入線しました。また、1979年〜1992年までは新鎌ヶ谷〜北初富間の連絡線を介して北総開発鉄道(当時)と直通運転を行っていたため千葉ニュータウン中央まで乗り入れを行っていた実績もあります。

京成千葉線直通非対応の8805編成。6両編成化で中間車の先頭車化など大規模な工事が続いた8800形ですが、2008年からは劣化した側扉の交換(ステンレス製のメーカー標準品へ)や、車体塗装の変更(ベージュ地に茶帯直通対応編成はマルーン帯化現行のジェントルピンク塗装)、2009年4月1日からは自動放送の使用開始、また写真の8805編成のように前照灯LED化など様々な改造で印象を大きく変えたほか、形態差も生じています。

クリーム色の化粧板と赤系の座席、扉が無い広幅貫通路が如何にも昭和の私鉄電車らしい雰囲気の車内。座席間のスタンションポールは後年新設されました。現在はステンレス製ドアへの交換が進み、登場以来の化粧板仕上げのドアは88018805編成のみでしか見られなくなっています。ドア窓に貼られているリアルな手のイラストが特徴的な関東地方特有の円形ドアステッカーにも注目。

6両編成化とは別に2006年より設置され始めた車内案内表示器。ドアチャイムも鳴動しますが、他社では聞かれない間延びした音色になっている点や、始発駅発車後のLEDの表示内容が「新京成電車をご利用くださいましてありがとうございます」と、関西の鉄道事業者を思わせる文言なのが面白いところです。

改造を繰り返しながら運用される8800形ですが、2017年には機器更新・車内リニューアル車が登場しています。公式では毎年1編成、計9編成に施工することが明らかにされており残り7編成は更新工事の対象外ということで、経年を考えると遠くない内の廃車も発生すると思われ編成により明暗が分かれそうですね。

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千葉ニュータウンと共に歩んだ30年、北総鉄道7300形

2021年06月13日 | 京成グループの鉄道

1991年、北総開発鉄道(当時)は新鎌ヶ谷〜京成高砂間の第二期区間が開通し、それまで1979年に登場した自社開発の7000形以外は京成からのリース車と新京成・京急からの譲渡車で運用して来ましたが久々の新形式となる7300形を導入しました。帯色や一部の機器が異なる以外は京成37001次車と共通設計の車両で、その後2003年に元京成3808編成の7808編成と社名を北総鉄道に改めた2006年には元3748編成の7818編成、更に2018年には元3778編成の7828編成が加わり、新造車2編成とリース車3編成の5編成が運用されています。

京成高砂〜新鎌ヶ谷間開通30周年のヘッドマークを掲げて運用中の7308編成。新造車のトップナンバーでベースになった京成37001次車と同じく種別表示器周りに枠があるのが特徴です。登場から長らく下枠交差式の菱形パンタグラフでしたが近年シングルアームに交換され印象が変化しました。この編成が登場した1991年当時は北初富〜新鎌ヶ谷間の連絡線を介して新京成電鉄と相互直通を実施していた為、7300形にも対応する保安装置と限流値を降下させる機能を搭載し松戸駅まで入線していたことが特筆されます。

京成2代目3000形の登場で余剰となり20032月より元3808編成のリースを受け登場した7808編成。経費節減の為に京成電鉄からの車両リースを受けている北総ですが、この編成の運用開始により京成3150形をリースした71508両が京成に返却され廃車になりました。北総入りしてから細部の改造を受けていますがパンタグラフは下枠交差式を維持しています。先頭車側面の飛行機をイメージしたデザインは2007年に加えられました。

共通設計である為、3700形と全く同一の車内設備。銘板や車番表記以外はドア部の黄色い警戒テープの本数が数少ない識別ポイントです。

これまた京成3700形と同一品の車内案内表示器。登場以来LED式でしたが、筐体はそのままLCDに一新されました。

現在は新車導入計画も特に無く、安定期とも言える状態なので今後も微細な改修を受けながら長く活躍して行くものと思われます。

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京成グループ標準車体で設計の北総鉄道7500形・千葉ニュータウン鉄道9200形

2021年06月01日 | 京成グループの鉄道

北総鉄道では1979年の北初富〜小室間開通時にスキンステンレス構造の7000形電車を導入し運用して来ましたが、老朽化に伴う置き換えが検討される頃に親会社である京成電鉄ではグループの標準車両として位置付けられる3000形の運用を開始していました。北総鉄道でも新型車はこの3000形をベースにした車両を導入する事とし、カラーリング以外は同形式と共通化した7500形を導入しています。2005年に8両編成2本の16両、2006年に8両編成1本が製造され、合計24両の陣容になりました。

エアポート快特で京急本線に乗り入れた7500形。帯は北総ブルー・北総ライトブルーと称される濃淡2色で、線路を共用する成田スカイアクセス線の開業で空港アクセス路線としても機能する事から先頭車には飛行機のスリットが入るのが特徴です。

北総線と一体化している千葉ニュータウン鉄道でも初代車両9000形の置き換えの為に京成3000・北総7500形と共通設計の9200形を2013年に導入しました。外観は帯色がスカイブルーとイエローの組み合わせになり、車内案内表示器をLEDスクロールから15インチ液晶画面に変更しているのが相違点です。保有は千葉ニュータウン鉄道ですが、車両の管理・運用は北総鉄道が行っており9100形、京成3700形のリース車9800形の2形式と共通で運用されています。

車内設備は京成3000形と完全に共通で、座席や化粧板の配色も同一になりました。識別出来るポイントは戸当たり部にも貼られた黄色い警戒テープ(京成車は戸尻部分にのみ貼り付け)くらいしか見当たりません。

元々は小振りなLEDスクロール式の車内案内表示器を設置していましたが、2019年に17インチワイド液晶画面に換装されました。千葉ニュータウン鉄道9200形は新製時から15インチ液晶画面を搭載しており、数少ない相違点となっています。

これらの形式が大挙して導入されるまでは、少数派で実に個性的な車両が活躍することで注目の的でしたが、現在はすっかり整理され帯色以外の違いが見出せなくなってしまいました。時代の流れや効率化を考えると機器・車体の共通化は致し方ない措置ですが、少々味気なくなってしまいましたね。

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〜新興住宅地から国際空港まで〜 異色の千葉ニュータウン鉄道9100形

2021年05月30日 | 京成グループの鉄道

北総鉄道は京成高砂から印旛日本医大までの32.3キロの路線ですが、小室〜印旛日本医大までの区間は第三種鉄道事業者の千葉ニュータウン鉄道が駅施設・線路を保有し、北総鉄道が第二種鉄道事業者として運営管理を行っています。この区間は旧住宅・都市基盤整備公団(→都市整備公団)が開発した千葉ニュータウンの交通機関として、公団が自ら鉄道事業者となり開業させ当初は住宅・都市基盤整備公団千葉ニュータウン線とされ北総開発鉄道(当時)に運転を委託する形態を採っていました。その後鉄道事業法の成立を機に1988年から上下分離方式を導入して北総線と一体化、公団は施設・車両の保有するのみとなりました。その後2004年に公団線区間の業績不振に伴い鉄道事業からの撤退を決定。北総鉄道の親会社である京成電鉄により設立された千葉ニュータウン鉄道に譲渡されています。その会社規模に比して8両編成5本もの電車を保有しているのが特徴で、内1編成は京成からのリース車となっています。

住宅・都市基盤整備公団では極めて独自色の濃い車両を導入しているのも特徴で、1995年に印西牧の原延伸を控えて登場した今回記事にする9100形も斬新な意匠が登場時は話題を呼びました。本形式は千葉ニュータウンのイメージアップもコンセプトになっており、C-Flyer(シーフライヤー「C」はChiba-Newtown(千葉ニュータウン)、Comfortable(快適)、Clean(清潔)、Culture(文化)の頭文字から。Flyerは速い列車の意)の愛称が付いています。現在では8両編成3(1次車2本・2次車1)が在籍し、千葉ニュータウン鉄道所有の北総鉄道管理となっています。

2000年の印旛日本医大延伸を控えて、若干設備を変更し増備された2次車。丸みが強く独特な印象の前頭部が目を引きますが、カラーリングも車内設備を示す為、車椅子スペース付近のドアは青、クロスシート部は黄色と外観から判別出来る斬新なものを採用しました。性能面は京成3700形と同様で、VVVFインバーター制御も同系とほぼ同じ東洋電機製造の装置を搭載しています。

車内設備(2次車で撮影)。ドア窓は戸当たり付近を黒で仕上げ、閉まった際に1枚窓であるかのように見える独自の形状です。車端部クロスシートは1次車では両側に設置しましたが、2次車では片側はロング化され、袖仕切り上部は手摺りが2本に増設されました。また1次車のみの特徴的な設備として、カード式公衆電話が設置されており、1997年の撤去後も区画だけが残されています。また自動放送装置も搭載されていましたが、こちらも後に撤去されました。

元々はLEDスクロール式だった車内案内表示器はLCDに換装されており、情報量が向上しましたが、意外にドアチャイム設置は見送られています。

かつては多彩な車両が運用され、趣味的にも面白かった北総鉄道線系統の列車ですが、現在は設計標準化と親会社からの車両リースによりすっかり画一化されてしまいました。しかしこの9100形は標準車両が目立つようになった京成グループに於いて一際目を引き、独特な存在感を放っています。今後もリニューアル工事などで少しでも長い活躍を期待したいですね。

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