1988年より運用を開始して以来、輸送力増強と千代田線への直通運転を控えて大量に増備され、翌年の1989年から先代9000形に代わり千代田線への直通を開始した1000形は1990年代に入ってからも引き続き導入されました。その中で、当時の新宿発着の急行は相模大野での分割併合を行う列車が大半を占めており、必然的に1000形も他形式同様に4両編成と6両編成での増備になりましたが、千代田線直通運用は全列車が10両編成で統一されていることから方針を転換し小田急では初となる10両固定編成が直通専用車として登場しました。1091F~1094Fの4編成が導入され、この編成の運用開始により一部の乗り入れ対応4両+6両が地上線運用にも就くようになりました。後継の3代目になる直通対応車4000形が導入された後も共通運用で活躍しましたが、2010年には全編成が千代田線乗り入れ禁止の指定を受け、その後程なくして地下鉄用ATCも撤去されて正式に地上専用車となり、21年に渡り続いた直通運用から撤退しました。
急行運用に就く1093Fです。1990年~2000年代は、最大8両までしか対応していないホームが多かったこともあり必然的に運用も限られる為、ほぼ千代田線直通運用に限定されていました。その為、営業運転を行う区間は代々木上原~本厚木間の準急運用が中心で(2002年より多摩急行が新設され多摩線にも入線)、新宿に発着する列車へ充当されることは2008年3月15日のダイヤ改正まで殆どありませんでした。
快速急行で運用中の1094F(ダイヤ改正前に撮影)。小田原方・新宿方共に他の編成を連結する事は非常時の救援以外有り得ないので、自動分併装置や貫通路構成仕切は設置されていません。
車内設備は基本的に通常の1000形と共通ですが、全てのドア上部にLEDによる車内案内表示を設置しています。写真では判別しにくいですが、初期の6両・4両と比較すると妻面に設置されている非常通報装置の形状が変化しました。座席は2000年代中盤頃にバケットシートに更新。
小田急では初めて採用になった車内案内表示器、ドアチャイムも鳴動します。1091Fのみ、両脇にスピーカーのスリットが存在する特徴がありました。このLED表示は直通先の千代田線の各種表示にも対応しており、当時の営団地下鉄の車両は直通する私鉄線の案内には非対応(例:「この電車は準急 本厚木行き」のように行先のみを繰り返し表示する。2002年の多摩急行運転開始時に改修)であったことから、かなり先進的な設備だったと言えるでしょう。ダイヤ改正後は種別の呼称を変更(“各停”から“各駅停車”へ)したため、他形式同様に始発駅発車後のあいさつ文等の表示内容を改修(改修前の例:「お待たせしました。本日も小田急線をご利用頂きましてありがとうございます。この列車は急行小田原行きです。」→改修後:「本日も小田急をご利用くださいましてありがとうございます。この列車は急行小田原行きです」など)しました。
現在進行中の大規模更新が完了すれば、こうした差異も無くなってしまいますが工事のペースがゆっくりなので、今しばらくは登場時の面影を残す姿を楽しめそうです。