久しぶりに本棚を整理したら、映画のパンフレットが色々出てきた。
その中の一つ。
「雨あがる」
この頃のおいらは、黒澤明の作品はあまり観たことがなくて、しかも全部ビデオでの視聴だったから、小泉監督が継承したとはいえ、黒沢明が企画した作品を初めて映画館で観られるとあって、とてもわくわくした。
初めて観た大画面のその世界は、西洋映画に毒されていた当時の自分にとって、流れるリズムも、温度も、空気感も違う、「面食らうぐらい新しい世界」だった。ゆっくりと、淡々と、でも、力強く流れるリズム。大川の蕩々たる流れのごとく。降り止まぬ雨のごとく。
だから、はっきり言って、観ている間は居心地の悪い時間もあった。今ならわかる。当時の若い自分は、その映画に合った呼吸法を知らなかったのだ。
映画には、その監督が創り出すリズムがある。自分のリズムが速すぎても遅すぎても、観ていて苛々したり、置いていかれたりする。(そういうのをきっと、「相性」と表現する人もいるんだろうけど。ある程度観る側のリズム感次第のような気がするんだよなぁ。)
今の自分は(年を経たせいか、何度も作品を観たせいか)、以前よりもしっくりと、映画に寄り添って楽な気分で、この作品を観られるようになった。
雨上がりの、濃厚な水分を孕んだ空気の中の、伊兵衛。
彼がまとっている殺気。その周囲の森の荘厳な美しさ。その対照。
晴れ待ちの小屋で表現される、極端なまでの屋内の暗さと、それにより際だつ灯りの暖かさ。
等等。
そして、作品全体が、何と清々しい信念と祈りで守られていることか。
だんだんと、この映画は楽しめるようになってくる。
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黒澤明監督の覚え書きより
「これは、主人公とその妻のドラマである。まず、その二人の関係をじっくりと描かねばならない。夫の愛に生きている妻は、そのままの生活で満足している。しかし夫は、貧しい生活が妻を不幸にしていると思っている。もっと出世してもっと楽な生活を送らせようと齷齪(あくせく)している。妻は、そんな夫を見ているのがつらくて、悲しいのに、夫には妻の心がわからない。
時-享保、戦国時代が終わり、次にその反動として奢侈逸楽(しゃしいつらく)を追う元禄時代になる。そして、それに飽きそれを遠ざけて、質実尚武を尊ぶ享保時代が来る。これは、その時代の話である。
見終って、晴々とした気持ちになる様な作品にすること。」(以上引用)
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ほんとに、見終わった後に、清々しい気持ちになるんだよなぁ。好きな作品だ。
その中の一つ。
「雨あがる」
この頃のおいらは、黒澤明の作品はあまり観たことがなくて、しかも全部ビデオでの視聴だったから、小泉監督が継承したとはいえ、黒沢明が企画した作品を初めて映画館で観られるとあって、とてもわくわくした。
初めて観た大画面のその世界は、西洋映画に毒されていた当時の自分にとって、流れるリズムも、温度も、空気感も違う、「面食らうぐらい新しい世界」だった。ゆっくりと、淡々と、でも、力強く流れるリズム。大川の蕩々たる流れのごとく。降り止まぬ雨のごとく。
だから、はっきり言って、観ている間は居心地の悪い時間もあった。今ならわかる。当時の若い自分は、その映画に合った呼吸法を知らなかったのだ。
映画には、その監督が創り出すリズムがある。自分のリズムが速すぎても遅すぎても、観ていて苛々したり、置いていかれたりする。(そういうのをきっと、「相性」と表現する人もいるんだろうけど。ある程度観る側のリズム感次第のような気がするんだよなぁ。)
今の自分は(年を経たせいか、何度も作品を観たせいか)、以前よりもしっくりと、映画に寄り添って楽な気分で、この作品を観られるようになった。
雨上がりの、濃厚な水分を孕んだ空気の中の、伊兵衛。
彼がまとっている殺気。その周囲の森の荘厳な美しさ。その対照。
晴れ待ちの小屋で表現される、極端なまでの屋内の暗さと、それにより際だつ灯りの暖かさ。
等等。
そして、作品全体が、何と清々しい信念と祈りで守られていることか。
だんだんと、この映画は楽しめるようになってくる。
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黒澤明監督の覚え書きより
「これは、主人公とその妻のドラマである。まず、その二人の関係をじっくりと描かねばならない。夫の愛に生きている妻は、そのままの生活で満足している。しかし夫は、貧しい生活が妻を不幸にしていると思っている。もっと出世してもっと楽な生活を送らせようと齷齪(あくせく)している。妻は、そんな夫を見ているのがつらくて、悲しいのに、夫には妻の心がわからない。
時-享保、戦国時代が終わり、次にその反動として奢侈逸楽(しゃしいつらく)を追う元禄時代になる。そして、それに飽きそれを遠ざけて、質実尚武を尊ぶ享保時代が来る。これは、その時代の話である。
見終って、晴々とした気持ちになる様な作品にすること。」(以上引用)
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ほんとに、見終わった後に、清々しい気持ちになるんだよなぁ。好きな作品だ。