ということで、上の息子がまたまた、今度は旦那の誕生日ディナーを計画してくれた。
今回の場所は、うちから車で半時間ぐらいの所にあるティーネックという町の『YAKITORI 39』。
名前の通り、焼き鳥屋さん。39はサンキューと読む。
焼き鳥屋といえば……もうこのブログではお馴染みの、思い出深いエピソードがある。
なんべんも読まされた人はここをスキップしてください!
ふたりの幼児、それも男の子を抱えた中年女と、どこの馬の骨かもわからん米国人の若者という組み合わせの妙な家族。
京都を回り、山科を回り、かなりの数の店に入ったけれど、どこの不動産屋もまるで相手にしてくれない。
家をしぶしぶ紹介してくれても、擦り切れた畳の上に、ゴキブリの死骸が何匹も転がっているような物件ばかり。
ほとんど諦めながら、けれどももう一軒!と思って車を走らせていると、湖に突き当たってしまった。
「ここどこ?」と、改めて標識をちゃんと読むと、『滋賀県大津市』と書いてあった。
「へ~、琵琶湖ってこんなとこにあったん?!」と、地図オンチのわたしは嬉しくなって、少し元気が出た。
けれどもまたさらに数件、素気なく断られ、いくら楽天家のわたしでも、もはや無理かと諦めかけた時、
一軒の、それはそれは小さな、めちゃくちゃ散らかっている、営業しているのか廃業しているのかよくわからない不動産屋を見つけた。
ものすごく風変わりなおじさんだったけど、その人こそが、やっとまともに話を聞いてくれた初めての人だった。
そして彼は、「あなたのことは僕が保証してあげましょう」と大家に掛け合い、昔置き屋だった五軒長屋の一番奥の家を取り持ってくれた。
雨風を凌げる屋根付きの家が手に入ったことはとてもありがたかったけれど、わたし達は、今思い出しても胸が少し痛むほどに貧しかった。
毎月の大型ゴミから、家具と食器、調理道具を、少しずつ揃えていった。
食材は、近所の市場の八百屋のおじさんが、その日の売れ残りを段ボール箱に入れて、内緒で分けてくれた。
それでもなんとか生きていけた。
息子達と旦那と4人一緒に、小さな真四角のステンレス風呂の湯にギュウギュウ詰めになってつかり、
アホなことを言っては笑い声を響かせる息子達を見ていると、それだけで幸せでたまらなかった。
けれどもそれは、たくさんの人を苦しめて、泣かせて、その気持ちの上に成り立っている幸せなのだから、生半可に生きてはいけないと思った。
とことん楽しく、幸せにならないとあかん、と思った。
数年経って、ほんの少しだけなら外食できるようになり、それでもひとり400円以上はダメ!というキマリが続いていた頃、
家の財政担当の旦那が、「焼き鳥食べに行こか」と言い出した。
「え?焼き鳥?ええの~?ほんま~?」
わたしは内心ドキドキしたけれど、滅多に贅沢なことは言わない旦那が滅多に言わないことを言ったので、そのチャンスを逃したくなかった。
その焼き鳥屋は、お風呂屋の隣にあった。
赤提灯が目に眩しかった。
前々から、この店の前をよく通っていた旦那は、いつか一度入ってみたかったらしい。
カウンター席に座り、注文が始まった。
ネギマ100円、砂肝120円……。
次々に運ばれてくる皿の上には、いつも決まって3本の串が乗っていた。
へ~、これで100円、めっちゃ安いやん!
旦那は珍しく冷酒をおかわりなんかして、酔っぱらってご機嫌である。
わたしもそれを見て、すっかり嬉しくなった。
すると、いつもはお金や食べたエビの数までうるさく言う親が、ふたり揃ってデレデレなのを見た息子達も、すっかりリラックス。
気がつくと、我々が食べた串の量が、ちょっとハンパではないことに気がついた。
そしてその時ふと、こんなん、3串で100円とか120円とか違てきたら、いったいどないして計算したらええんやろ?という疑問がわいた。
そしてその後ふと、あれ?もしかして、まさかとは思うけど、あの100円は1串の値段?……という、世にも恐ろしい考えが浮かんだ。
さぁ~っと酔いが醒めた。
横でヘラヘラ笑っている旦那に、もしかして、まさかとは思うけど、の話を耳打ちした。
そしてそのもしかしてまさかは、全然もしかしてまさかではなく、その通りなのであった……。
話を聞いている途中から、旦那もすっかり酔いが醒め、自転車に飛び乗って、家にお金を取りに行った。
息子達とわたしは、もし家にも支払えるだけのお金が残っていなかったら、そのまま住み込みで働かせてもらおうと思いながら、カウンター席でうつむいて待っていた。
もう20年ほども前のことなのに、焼き鳥屋に入った途端にその話になった。
その頃はまだ小学校低学年だったのに、息子達はふたりとも、支払った代金まで覚えていた。
そして、あの焼き鳥事件のあった日から一度として、わたし達は一家揃って焼き鳥屋に行っていない、ということに気がついた。
やれやれ……。
ティーネックの焼き鳥屋さん。
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日々、会社の中にあるジムで鍛えている筋肉を披露する息子。きっしょ~!
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鴨とアボガドのサラダ。
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小アジの唐揚げ。
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焼き鳥各種。
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せっせと焼いてくれる店員さん。
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ご馳走する方とされる方が逆転したふたり。
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いつだって仲良しのこのふたり。
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おにぎりで仕上げをして、ごちそうさまでした!
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スポンサーになってくれた息子は、またまたゴルフの練習をちょこっとし、クィーンズのアパートメントに帰っていった。
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おまけ。
焼き鳥屋のすぐ近くに、3年前まで旦那が通っていた、合気道の道場がある。
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その道場の正面のガラス窓に、まだこれがかけられていた。
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道場の師匠ジェリーに、まさに投げられようとしている旦那、なのであった!
今回の場所は、うちから車で半時間ぐらいの所にあるティーネックという町の『YAKITORI 39』。
名前の通り、焼き鳥屋さん。39はサンキューと読む。
焼き鳥屋といえば……もうこのブログではお馴染みの、思い出深いエピソードがある。
なんべんも読まされた人はここをスキップしてください!
ふたりの幼児、それも男の子を抱えた中年女と、どこの馬の骨かもわからん米国人の若者という組み合わせの妙な家族。
京都を回り、山科を回り、かなりの数の店に入ったけれど、どこの不動産屋もまるで相手にしてくれない。
家をしぶしぶ紹介してくれても、擦り切れた畳の上に、ゴキブリの死骸が何匹も転がっているような物件ばかり。
ほとんど諦めながら、けれどももう一軒!と思って車を走らせていると、湖に突き当たってしまった。
「ここどこ?」と、改めて標識をちゃんと読むと、『滋賀県大津市』と書いてあった。
「へ~、琵琶湖ってこんなとこにあったん?!」と、地図オンチのわたしは嬉しくなって、少し元気が出た。
けれどもまたさらに数件、素気なく断られ、いくら楽天家のわたしでも、もはや無理かと諦めかけた時、
一軒の、それはそれは小さな、めちゃくちゃ散らかっている、営業しているのか廃業しているのかよくわからない不動産屋を見つけた。
ものすごく風変わりなおじさんだったけど、その人こそが、やっとまともに話を聞いてくれた初めての人だった。
そして彼は、「あなたのことは僕が保証してあげましょう」と大家に掛け合い、昔置き屋だった五軒長屋の一番奥の家を取り持ってくれた。
雨風を凌げる屋根付きの家が手に入ったことはとてもありがたかったけれど、わたし達は、今思い出しても胸が少し痛むほどに貧しかった。
毎月の大型ゴミから、家具と食器、調理道具を、少しずつ揃えていった。
食材は、近所の市場の八百屋のおじさんが、その日の売れ残りを段ボール箱に入れて、内緒で分けてくれた。
それでもなんとか生きていけた。
息子達と旦那と4人一緒に、小さな真四角のステンレス風呂の湯にギュウギュウ詰めになってつかり、
アホなことを言っては笑い声を響かせる息子達を見ていると、それだけで幸せでたまらなかった。
けれどもそれは、たくさんの人を苦しめて、泣かせて、その気持ちの上に成り立っている幸せなのだから、生半可に生きてはいけないと思った。
とことん楽しく、幸せにならないとあかん、と思った。
数年経って、ほんの少しだけなら外食できるようになり、それでもひとり400円以上はダメ!というキマリが続いていた頃、
家の財政担当の旦那が、「焼き鳥食べに行こか」と言い出した。
「え?焼き鳥?ええの~?ほんま~?」
わたしは内心ドキドキしたけれど、滅多に贅沢なことは言わない旦那が滅多に言わないことを言ったので、そのチャンスを逃したくなかった。
その焼き鳥屋は、お風呂屋の隣にあった。
赤提灯が目に眩しかった。
前々から、この店の前をよく通っていた旦那は、いつか一度入ってみたかったらしい。
カウンター席に座り、注文が始まった。
ネギマ100円、砂肝120円……。
次々に運ばれてくる皿の上には、いつも決まって3本の串が乗っていた。
へ~、これで100円、めっちゃ安いやん!
旦那は珍しく冷酒をおかわりなんかして、酔っぱらってご機嫌である。
わたしもそれを見て、すっかり嬉しくなった。
すると、いつもはお金や食べたエビの数までうるさく言う親が、ふたり揃ってデレデレなのを見た息子達も、すっかりリラックス。
気がつくと、我々が食べた串の量が、ちょっとハンパではないことに気がついた。
そしてその時ふと、こんなん、3串で100円とか120円とか違てきたら、いったいどないして計算したらええんやろ?という疑問がわいた。
そしてその後ふと、あれ?もしかして、まさかとは思うけど、あの100円は1串の値段?……という、世にも恐ろしい考えが浮かんだ。
さぁ~っと酔いが醒めた。
横でヘラヘラ笑っている旦那に、もしかして、まさかとは思うけど、の話を耳打ちした。
そしてそのもしかしてまさかは、全然もしかしてまさかではなく、その通りなのであった……。
話を聞いている途中から、旦那もすっかり酔いが醒め、自転車に飛び乗って、家にお金を取りに行った。
息子達とわたしは、もし家にも支払えるだけのお金が残っていなかったら、そのまま住み込みで働かせてもらおうと思いながら、カウンター席でうつむいて待っていた。
もう20年ほども前のことなのに、焼き鳥屋に入った途端にその話になった。
その頃はまだ小学校低学年だったのに、息子達はふたりとも、支払った代金まで覚えていた。
そして、あの焼き鳥事件のあった日から一度として、わたし達は一家揃って焼き鳥屋に行っていない、ということに気がついた。
やれやれ……。
ティーネックの焼き鳥屋さん。
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日々、会社の中にあるジムで鍛えている筋肉を披露する息子。きっしょ~!
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鴨とアボガドのサラダ。
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小アジの唐揚げ。
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焼き鳥各種。
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せっせと焼いてくれる店員さん。
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ご馳走する方とされる方が逆転したふたり。
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いつだって仲良しのこのふたり。
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おにぎりで仕上げをして、ごちそうさまでした!
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スポンサーになってくれた息子は、またまたゴルフの練習をちょこっとし、クィーンズのアパートメントに帰っていった。
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おまけ。
焼き鳥屋のすぐ近くに、3年前まで旦那が通っていた、合気道の道場がある。
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その道場の正面のガラス窓に、まだこれがかけられていた。
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道場の師匠ジェリーに、まさに投げられようとしている旦那、なのであった!