ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

夏のおわりのはじまりのおわり

2015年08月27日 | ひとりごと
夏の間、ずっと頭のどこかにあった、中学校の先生になることへのワクワク感とドキドキ感。
どんなふうに始めたらいいのか、まず何よりも、一クラス25人という生徒たちの前で、どんな挨拶をしたらいいのか、
などと、あれやこれやと想像したり考えたりしていました。



夏休みはたいてい、9月のレイバーデーという祝日の後に始まるのですが、今年のレイバーデーは7日なので、例年より遅い始まりになると、生徒たちは嬉しそうに話していました。
とはいえ、いくらなんでももう8月が終わりそうなので、そろそろ学校から何らかの連絡があるはずだと思いながら待っていたのですが、いっこうに連絡が来ません。
こういうこともこちらから連絡するのかな?などと、慣れない仕事場への不安がじわじわと濃くなってきたので、こちらからメールを送りました。

「先月よりご無沙汰しています。
まずは、最後にいただいたメールへの返事をしないまま、時が過ぎてしまったことをお詫びします。
ところで、新学年の始まりがそろそろ近づいてきました。
準備するものやカリキュラムについて、スーパーバイザーの方と話し合う時間を持ちたいのですが、いかがでしょうか?
それから、各クラスの名簿を、授業が始まる前にいただくということは可能でしょうか?
長年子どもたちを教えてきてはいるのですが、名前を覚えるということが少々苦手で、スペルの発音の練習も必要だと思うのです。
新しいことへの期待と不安でドキドキしていますが、精一杯頑張ろうと思いますし、また同時にとても楽しみにしています」

すると、

「まうみ、ごめんなさい。もうあなたのポジションには別の人を入れました。
あなたの履歴書は今後のためにきちんと保管しておきますが、あなたはもうこの仕事に興味を失ったと思ったので」

という返事が送られてきました。

えっ…。

しばらく呆然と、そのたった一行のメールを眺めていました。
いったい何が起こったのだろう。
慌てて、ローレン校長とやり取りしていた、Eメールの履歴を辿ってみました。

学校での面接は2回、どちらも成功でした。
その後、学校が夏休みに入ったので、会話はもっぱらEメールで行われました。
採用を前提に、報酬、クラスの数、生徒の数、教える事柄の細かな内容などを聞き、それについてのわたしの意見や希望を述べていきました。
そのうちに夫とわたしは、結婚してから初めての、10日間という長い期間をとって、フランスとウィーンへの旅行に出かけたので、
その間は多分、インターネットサービスを得るのが難しくなるだろうから、できたら旅行が終わるまで待ってもらいたいと言ったのですが、
どうしても決めてしまわなければならなかったらしく、旅行中にガンガンメールが送られてきました。

わたしのことをとても気に入ってくれた学校側は、一日のうちに4クラスすべてを教えられるよう、ずいぶん苦心してくれました。
ただ、私学の特徴なのか、この人は頼みさえしたらあれこれ無償でやってくれるとなったら、平気でこき使い始めるから気をつけるようにと、
この学校に通っていて、かつわたしの生徒でもある子たちの母親から散々聞かされていたことから、譲れない部分は譲らないという態度をとっていたので、
サラリーは変えられない代わりに、追加でお願いする日曜のミサや卒業式などのピアノ演奏については、毎回別に払いますと、こちらが何も言っていないのに申し出てくれたりしました。
こちらからの返事はやや遅れ気味でしたが、とりあえず会話は進み、最後の質問として、ミサの回数は年に何回あるか、一回のミサはどれぐらいの長さか、
そして、報酬額は手取りのものか、それとも税別かということを尋ねました。

税金のことは、今までの経験からすると多分、税別であると思っていましたが、まあ、参考程度に聞いておこうと、軽い気持ちで聞いたのでした。

そのメールに対する返事が送られてきたのが7月9日。
わたしたちの旅行が終わったのが7月10日。
旅行中ずっと、100年ぶりと言われるほどの熱波に襲われていたので、かなり疲れもたまっていました。
終わりの二日間はほぼ、メールを読むことも書くこともできず、ただただ無事に我が家に辿り着くことを第一に考えていました。
家に戻ってからは、留守番をしていた猫たちの世話や片付けなどに追われ、あっという間に時間が過ぎていき、

そして旅行中最後のメールから11日後の20日に、ローレン校長からのメールが届きました。
そしてその一行メッセージの中の一部分を、わたしは全く逆の意味に読んでしまっていたのでした。
『We have decided to fill the position from within.』
このwithinという単語を、わたしを正式に採用した、というふうに読み間違えたのでした。
どうしてこんなふうに改めて、メールでわざわざ言ってきているのだろうと、ふと変な気持ちがしたのですが…。




一昨日の、ローレン校長からの仰天メールを読んでからすぐに、慌てて夫にこの7月20日のメールを見せると、
「これはネイティブの中でも勘違いする人が出てくるかもしれないような、とても間接的な断り方だから」と、
とりあえず慰めてくれました。

なんてこった…。

そうとも知らずにわたしは、一昨日までずっと、楽譜屋に出かけてはセオリーのワークブックを覗いたり、コーラス用の良い曲は無いかと探したり、
さらには鏡の前に立ち、25人の中学生を前にして話している自分を想像しながら、挨拶の練習をしてみたり、
まあそんなことをあれこれと、この夏中やっていたのでした。

だから、一昨日送ったわたしのメールは、ローレン校長にとってはただただビックリの、いったい何を考えているんだこいつは?なメールだったわけで、
そのことが恥ずかしくもあり、悔しくもあり、悲しくもあり、しばらくぼぉ~っとしていました。

最後の質問メールに対する答メールを読んで、「読みました、ありがとう」と言わなかったことが、こんな大きな誤解を生むきっかけになるなんて…。

「もうあなたが興味が無くなったと思った」

Eメールでの会話の恐ろしさを、つくづく学んだような気がします。

もちろんタイミングも悪かった。
そして、てっきり採用されていることが前提になっていると、油断していたわたしも悪かった。
良い勉強になりました。

気を取り直して昨日、ローレン校長に、お礼のメールを送りました。
わたしが希望するクラス編成や時間割を叶えるのにかなり手こずらせたし、面接のために時間をとってもらったこともありがたかったからです。
ようやく事情がわかったわたしからの、だからまともな内容のメールが届いて、彼女もちょっと安心したのか、
「今回のことは、勘違いからこんな結果になって、申し訳ないと思っています。
でも、もう学校は、この火曜日から新年の準備に取り掛かっていて、前に進まなければなりません。
あなたの履歴書は最優先に、我々の元に置いておきます。
また来年、もしかしたら今期の途中からでも、何かお願いできるようなことがあるかもしれません。
その時は必ず電話で連絡させてもらいます」
という、心がこもった返事が送られてきました。

ということで、この秋から先生になるぞ~!は、今のところはお預けになりました。
かなり恥ずかしくも悲しい話ですが、わたしと一に喜んでくださったみなさんには伝えておかなければと思い、
まだちょっと落ち込み中のこんがらがった頭ではありますが、お知らせをしたかったので書きました。

失敗は成功のもと。
七転び八起き。
いや、転んでいるのは七回では到底済まないとは思いますが、また前を向いてテクテク歩いていこうと思います。

コメント (4)
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