4) 蓋付きの丼物用の器を作る。
④ 丼物の場合は、本体と蓋部を別々に焼成する事が出来ます。
それは、焼成で本体に少々の歪みや狂いが発生しても、蓋が閉まらない危険が無い為です。
その故、本体側の内側や口縁部に施釉する事ができます。
一般に蓋物は、本体に蓋をした状態で焼成する事を基本にしています。
別々に焼成すると、本体の口縁に歪みや狂いが発生した場合には、蓋が合わず蓋をする事が
出来なくなってしまいます。蓋をした状態で焼成すれば、例え歪みや狂いが発生しても、
少なくとも蓋をして本焼きした位置では、蓋と本体がぴったり合わせる事が出来ます。
本焼きで歪むのは、殆どの場合本体側で、蓋で起きる事は稀です。
尚、蓋を本焼きする場合、伏せた状態か、上に向けた状態で行いますが、下になる部分には
施釉出来ません。
5) 煮物を入れる丼は一般には蓋が付きません。
蓋があると蓋受けが必要になり、この蓋受けが中の料理(煮物など)を取り出す際に、邪魔に
なる事と蓋受け部分に釉が載らない(掛けられない)為、汚れが発生し易い為です。
しかし煮物を一時保管する場合(次の日なで)や、煮物の冷めるのを防ぐ為などに、蓋を設ける
場合があります。その場合の蓋の形状は、落とし蓋か乗せ蓋になります。
① 蓋受けの無い丼: 小さな丼ではあえて蓋受けを設けない場合もあります。
味噌汁を入れるお椀と蓋の様に、落とし蓋の蓋受けが無く本体の内側を狭くして、その壁面に
蓋が擦れる様にします。問題点として、蓋が安定せず蓋が回転して内側に落ち込む危険が
ある事と、本体と蓋が側面で擦り合わされる為、蓋の開け閉めがし難い事、本体側に擦り傷
が入り易くなる事です。
② 蓋受けを持つ丼: 蓋を必要とする丼では、蓋受けを設けた形にします。
特に蓋が重量感(重たい)がある場合には、蓋受けを設けます。
③ 蓋受けの作り方。
) 手捻りの場合ですと、蓋受け部分を後付けする方法が一般的です。
即ち、器の上部より0.5~1.0cm程度下の内側に、紐状の物を一周貼り付けます。
紐の上部は竹へら等で水平にし、下部は三角風に指や竹へらを使い変形させます。
上部が水平でないと蓋が「ガタツキ」ます。
下部が三角風でないと中身を取り出す際に、引っ掛かり使い勝手の悪い事と、強度的に
弱くなります。 又、蓋受けの内側は綺麗な円に成る様にします。
尚、丸い紐ではなく、予め直角三角形の紐を作り取り付ける方法があります。
当然の事ですが、本体と紐の乾燥度を揃える様にします。
) 蓋受けを轆轤で作る場合は、本体上部をやや肉厚してその土を使う方法と、上部の土を
内側に折り曲げて使う方法があります。前者の場合が一般的な方法です。
a) 肉厚な上部(口縁)の土を使い蓋受けを作る。
口縁の外側を肉厚にして張り出させます。右手人差し指(内側)と親指(外側)で口縁を
摘む様にして、内側の土を0.5~1.0cm下に押し込み段差を設けます。
蓋受けとなる部分はやや肉厚になります。この部分を中指と人差し指で摘む様にして、
内側に伸ばします。 蓋受け部より上部の口縁はなめし皮を使ってしっかり締めます。
全体の形が出来たら蓋受け部の大きさを「トンボ」や「コンパス」で測っておきます。
・ 上記の如く指を使う代わりに、竹へらを使う方法もあります。
肉厚な口縁を竹べらで二分し、内側を下に落とし込み蓋受けを作ります。
指は丸い為、シャープな蓋受けが作り辛いです。その為爪を使って角張らせる方法を
取る場合があります。竹べらによる蓋受けを作る方法では、蓋受けの角部がしっかり出
せる利点があります。
b) 土を折り曲げて蓋受けを作る方法。
以下次回に続きます。