土瓶(どびん)と急須及び宝瓶(急須の一種)は、お茶(緑茶、日本茶)を煎れる道具ですが、近年
緑茶を煎れる家庭も少なくなっている様で、ペットボトル入りの日本茶類も多く出回っています。
特に、今では特殊な場合(松茸の時期)を除き、土瓶を見る機会はほとんど無くなってきています。
土瓶自体が重い事と、使用勝手が悪い為、他の道具に取って替わられたと思われます。
但し、陶芸をされている方は、急須を必要としなくとも、一度は、作る事をお勧めします。
急須作りには、本体、取っ手、注ぎ口、蓋作りと、これらの部品を組み合わせて作品に仕上げるという
陶芸の色々な技術が濃厚に凝縮されているからです。
前置きが長くなりましたが、本日の本題に入ります。
土瓶や急須、宝瓶(ほうびん)はお茶を煎れる役目がありますが、それらの道具には、幾つかの
違いがあります。
1) 土瓶と急須、宝瓶の違い。
① 形の違い。
) 土瓶は器の上部に蔓状の持ち手が付いています。
一般に持ち手は可動式で、横に倒せる構造になっています。更に、熱が取っ手に伝わらない
様に、植物の蔦(つた)などの蔓(つる)が巻かれています。
) 急須は器の側面に棒状の持ち手が固定されて付いています。
轆轤成形が一般的な作り方です。
) 宝瓶は楕円形又は卵型の器で、片手で鷲掴みする様に持ちますので、特別に持ち手は
ついていません。但し熱湯の温度が手(指)に伝わらない様に、持つべき処は肉厚を二重
にしたり、滑り落とす事が無い様に工夫されています。
宝瓶は、手捻りで作る事が多く、本体と注ぎ口は一体で、本体と蓋の二点から成ります。
) 使い勝手の違いで、蓋の構造にも差があります。
即ち、お茶を注ぐ際、本体を傾けますが、土瓶は蓋を押さえる事は少ないですが、急須は
反対の手で押さえて注ぎます。その為土瓶では、蓋が簡単に落ちない構造にする必要が
あります。宝瓶の場合では、器を鷲掴みする際に、同じ手の手の平で蓋を押さえる事に
成ります。
② 大きさの違い。
) 土瓶は、急須程度の小型の器から、一度に10人以上の人がお茶を飲める、大容量の
器など多くの種類が有ります。大物であっても持ち手が器の中心(重心)にある為、安全に
持ち運びや取り扱いができます。
) 急須は、お茶が湯飲みに1~2杯程入る容量です。持ち手の部分が器の重心から離れて
いる為、容量の大きな急須は見かけません。
) 宝瓶は、片手で鷲掴みして使いますので、必然的に小型の急須程度の大きさになります。
③ 用途の違い。
) 土瓶は当初、薬缶(やかん)と同じ様に、薬(漢方薬)を煎じて飲む為の容器でした。
やがて煎茶を飲む道具として使われる様になり、更に松茸の土瓶蒸の容器としても
使われています。
その為、直接火に掛ける事も可能で、場合によっては酒も温める(お燗)事もした様です。
尚、特別大きな土瓶は飾り物として置物や、花器として使用する場合があります。
) 急須と宝瓶は、煎茶を煎れる道具として使われます。
他の用途に使う事はほとんどありません。
④ 作り方にも違いがあります。
一般に、土瓶や急須は轆轤挽きで作りますが、宝瓶は手捻りで作る事が多いです。
以下次回に続きます。