kiyoshi様より以下のご質問を受けました。(2013-3-25)
自宅で陶芸活動を行っている者です。青磁の綺麗な貫入を皿ではなく壺など縦型の作品に出す
にはどの様な方法があるのでしょうか?厚掛けしないと貫入が入らないし、厚掛けすると自重で
流れ過ぎる。薄掛けや温度を下げると綺麗な貫入が入りません。
何か良い方法は有るのでしょうか。よろしくお願いします。
明窓窯より
青磁釉は厚掛けする事により、青に発色する釉で、還元焼成により得られます。
貫入は、土と釉との収縮率の差(釉>土)によって、釉に「ひび」が入る事をいいます。
土(主に粘土)と釉との関係で、細かい貫入から大きな貫入(氷裂青磁など)まで色々あります。
さて、質問の要旨は、以下の二つの問題では無いかと思います。
(または一方かも知れません。)
1) 釉を厚く掛ける事が出来ないと言う施釉上の問題。
2) 焼成時に厚掛けにした釉が流れ落ちて仕舞う問題。
この問題の解決には、釉の問題(流動性、熔融性及び、ご自分で調合か、市販の釉か。)、
焼成の問題(焼成温度、焼成時間、窯、他の作品の有無など)など複雑に関係しています。
ここでは、1)に付いてのみお話しますので、質問の趣旨が2)の場合には、改めてお問い合わせ
下さい。その際できるだけ、詳細な状態を示して頂けると、より的確なお話が出来ると思われます。
1) 釉を厚く掛ける方法。
① 施釉の現象(原理):すでにご存知の事と思いますが、お話します。
素焼きした作品に釉を掛けると、1分もしない内に表面が乾き、直ぐに持てる様になります。
これは、作品本体が溶けた釉の水分を吸い取る為です。
それ故、本体が水分を吸収できなければ、いくら厚く釉を掛けても、上に載せられず、ただ
流れ落ちるだけです。
② 施釉の方法。
) 浸し(漬け)掛け: 最も一般的な方法で、釉が均等な厚みに掛ます。
一度の作業で、上手に施釉できる利点があります。
但し、他の施釉方法と比べ、多くの水分を吸収し易いです。
) 流し(柄杓)掛け: 大物の作品の施釉する際に行われます。
一度或いは二度三度と重ね塗りが可能です。特に異なる釉を重ね塗りする際には、便利な
方法です。浸し掛けに次いで、水分を多く吸収し易いです。
) スプレー掛け(ガン吹き): 霧吹きを用いて施釉する方法です。
少ない釉の量で施釉出来る事や、マスキングの方法で、好みの位置に違う色の釉を掛ける
事が出来る利点があります。水分の吸収量は少なくなります。
) 刷毛塗り: 釉が斑(まだら)に掛かる為、余り一般的ではありませんが、作品によっては
この方法が使われます。重ね塗りにはある程度の練習が必要かも知れません。
なぜなら、重ね塗りの積もりが、下地の釉を剥ぎ取る危険があるからです。
刷毛で塗ると釉は薄くなり勝ちです。
③ 本質問の回答。
) 青磁釉を厚く掛けるには、)の方法は向いていません。)~)の方法を取ると良い
でしょう。
) 基本は薄い釉を数度に分けて塗る事です。但し、下地の釉が十分乾燥後に行わないと、
釉は流れ落ちます。塗り重ねるに従い、本体の水の吸収率は低下します。
更に、本体の肉厚が薄いと直ぐに飽和状態に成ります。表面の釉が乾いている様に見え
ても本体が乾燥していない場合が多いですので、ある程度の時間を置いて施釉する必要が
あります。但し、乾燥した釉の表面に濃い目の釉を掛けると、釉が剥がれる危険もあります
) 結論として、
a) 流し掛けでは、2~4度程度の施釉とします。但し、徐々に施釉する間隔を長くする
必要があります。
b) スプレー掛けは、水分の吸収が他の方法より少ない為、全体を均一に施釉した後再度
施釉する事が可能です。但し3~6度塗りと回数を増やすに従い、時間を置く必要があり
ます。但し、霧状の飛沫が飛びますので、それなりの設備や、少なくともマスクは必要です。
c) 刷毛塗り: 以下は著名な作家さんの施釉方法です。参考にして下さい。
茨城県在住の浦口雅行氏は、貫入が虹色に輝く青磁を発表し、浦口青磁と呼ばれる作品を
作っている注目の作家ですが、その施釉の方法が刷毛による方法だそうです。
青磁釉は厚く塗るほど、色彩が重厚に成り貫入も大きくなります。厚みが薄いと細かな貫入と
なり、素地の影響を強く受ける様になります。
◎ 青磁釉は乾かしながら何度も塗り重ねます。多い時には10~15回程重ねるそうで、
一回の施釉では0.2~0.3mm程の厚みに成ります。
縦に長い作品では、下部を手に持ち、上部を刷毛塗りし、ストーブで乾燥後、上部を持って
下部に施釉する事を繰り返します。
以上 お役に立つ回答になっていないかも知れませんが、不明な点がありましたら再度お問い合わせ
下さい。