わ! かった陶芸 (明窓窯)

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焼き物は壊れ物 37 焼成後の問題点と処置2

2014-01-25 17:32:14 | 焼き物の材料(原料とトラブル)

3) 焼成後に起こるトラブル。

 ② 水漏れ現象。

   焼成された作品に水などを入れると、壁や底を透して水分が漏れる場合があります。

  ) 花瓶の様に数日も水を入れる器では、側面や底面から水が滲み出します。

    壁から滲み出した水分は、汗をかいた様な状態以外では、蒸発してしまいますのでほとんど

    認識されない事も多いです。同様に、短時間使用する徳利や酒器では、滲み出てもさほど

    問題に成りません。 短時間の使用で水漏れを起こす場合は、素地に「ひび」が入っている

    事が疑われます。

  ) 水漏れの原因は、素地が十分焼き締まっていない為や、貫入(かんにゅう)により起こります

    十分焼き締まる様にするには、焼成温度を上げる事です。但し釉との関係があり、無闇に

    上げる事は出来ません。(釉が熔け過ぎて流れ易くなります。)

   a) 備前焼は土の焼き締まる率が20%程度と大きい為、施釉しなくても水漏れを起こさないと

     言われています。

   b) 磁器は陶器より高い温度で焼成し、素地もガラス化しますので、水漏れの恐れは格段に

     少ないのです。

   c) 貫入は、釉に現れる「ひび」です。「ひび」には細かい物から、大貫入と呼ばれる物など色々

      あります。基本的には、「ひび」の部分より水が浸入しますので、素地にまで達します。

      素地が水を透す程度の焼き締まりですと、水漏れを起こす事に成ります。

  ) 他の方法は素地の粒子を細かくする事です。粒子が細かいと良く焼き締まります。

    粒子の細かい土は、細目(又は特練り)の名前で市販されています。

    ご自分で土を作る際には、素地を微粉末に加工する事です。

  ) 石灰と酸化鉄を含む土を還元焼成すると、ある温度で急激に焼固し、一部はガラス化

     しますが、他の部分は多孔質を多く含んだ状態になります。この様な状態に焼き上がった

     場合には、必ず水漏れを起こしますので、防止剤を用いるしか方法はありません。

      注: 水漏れ防止剤: 以前はシリコン製(有臭)の物がありましたが、現在では食器用に

      使う事が禁止さ、食器用(無色透明、無臭)の物が市販されていて使われています。

    イ) 水漏れ防止剤は水を弾く性質がありますので、和食器の様に使う前に水に浸し、

      潤いのある釉肌を出現させる場合には、表面には使用しない事です。

      勿論使用する事により、貫入の「ひび」に入り込み、汚れの防止や水漏れ防止にも成り

      ますが、見える釉面には、使わない方が焼き物としての趣を残します。

    ロ) 土物(陶器)の食器は、僅かですが、どうしても水を吸います。使用後には良く乾燥

      させますが、高台の内側は通気性に欠けますので、「黒黴(かび)」が発生し易いです。

      高台内を水漏れ防止剤で一筆塗る事で防止できます。

    ハ) ベタ高台や畳付き部など施釉していない部分は、極僅かでも水を吸い込みます。

      その為、重ね置きした場合など、通気性が損なわれ黴(カビ)などが発生し易いですので、

      水漏れ防止剤を塗る事です。

    ニ) 水漏れ対策を施さない花瓶などは、水漏れを起こし易いです。

      水を入れてそのまま机や床の間、テーブルなどに放置すると、置かれた位置に、底跡が濡れ

      て現れてきます。これは、内底を通して外に水漏れした跡です。

      勿論、対策を採らなくても水漏れを起こさない事もありますが、その際には1週間ほど水を

      入れて確認する必要があります。時間を掛けてジワジワ滲み出す事もあるからです。

    ホ) 水漏れ防止剤の使い方。

      長時間水を入れる器に水漏れ防止剤を使う場合、防止剤が水溶性の為、器が十分乾燥して

      いる必要があります。 

     ・ 器の内側に防止剤を少量流し込み、器を回転させながら、口縁周辺まで、液体を移動

       させます。 次に液体を別の容器に捨て、そのまま1日程度乾燥させます。

       (尚、一度使った液体は再度使う事が出来ます。)

       1日経てば使用可能になります。その場合でも確認の為、数日水を入れた状態で観察

       する事です。一度で水漏れが止まらない場合には、再度水漏れ防止剤を使い処理します。

       それでも水漏れする場合には、内側に釉を掛けて再び本焼きしますが、一度防止剤を

       塗ると、釉が掛かりませんので、素焼き後に施釉する事に成ります。

以下次回に続きます。      

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