3) 焼成後に起こるトラブル。
③ 底面や高台の畳付きの処理。
窯から出したばかりのほとんどの作品は、底面や畳付き部に細かい異物が存在しています。
主に、窯詰めの際に棚板などに焼き付かない様に塗った水酸化アルミナ等による「ザラツキ」や
棚板に塗ったアルミナコーチングのカス(滓)等です。これらは、テーブルや置いた場所の表面に
引っかき傷付けます。その為、砥石(といし)などで綺麗に削り取り除きます。(紙ヤスリでは
ほとんど取れません)砥石の無い場合には、作品の高台同士を摺り合わせて、「ザラツキ」を取る
方法が昔から行われています。昔の瀬戸物屋さんは、販売するお客の前で行っていた方法です
アルミナコーチングのカスは、前回の本焼時までに釉が棚板上に飛び散り固まった物です。
本焼き中に再度熔け、くっついた物ですので、窯詰めの際に綺麗に削り残さない様にします。
このアルミナは容易には取れませんので、ダイヤモンド・ヤスリで削り取る事です。
4) 機械的強度の問題。
本ブログの標題の様に、焼き物は壊れ物です。但し、焼成した作品には、強度的に強い物と、
弱い物が存在します。強弱の違いの原因は何処に在るのでしょうか。
① 強度が弱い焼き物。
) 十分焼締まりのしていない焼き物、即ち、低い温度で焼いた物は機械的強度が弱いです。
特に、楽焼などは低い温度で焼成する為、本焼きの作品より強度が落ちます。
) 粘土類に珪砂が多くなると、
a) 粘りが無くなり気孔(素地の中にある微小の泡)も多くなり、機械的(物理的)強度が落ち
ます。注: 珪砂とは主に石英粒からなる砂の事です。花崗岩(かこうがん)等の風化で生じ
ます。珪石を粉砕した人工的な物もあります。
b) 焼成中に珪砂が異常膨張や異常収縮する為、素地が歪む事があります。
c) 但し、気孔が多くなる事は、温度の急変に耐える為、鍋料理の陶器等には向いています。
d) 石灰成分の多い焼き物は、湿度に対して不安定です。即ち湿気を吸収し膨張(水和膨張)
する性質がありますので、湿気の多い場所に長期間放置すると、強度が落ちます。
) シャモット(焼粉)の功罪。
a) シャモットは収縮の大きい素地に入れ、収縮率を少なくする働きをします。
但し、収縮率が大きいと、作品の機械的強度は増す利点もます。
b) シャモットを入れると、多孔性になり急熱急冷に耐える性質が増します。
特に、楽焼などの様に、急熱急冷する場合、素地土に多めに加えます。
c) 多孔質を多く含む焼き物は、断熱性に優れます。熱いお茶を入れても磁器の様に直ぐに
表面が持てなくなる事はありません。又保温効果があり、中の汁やお酒やお茶などの液体が
冷め難い効果があります。
d) 更に、作品の重みを軽くする働きもあります。特に持って使う器は軽い事が重要ですので、
シャモットを入れる事は有効に成ります。
e) 焼成温度範囲が狭い場合、シャモットを入れる事で、焼成温度範囲を広げる事が出来ます。
f) シャモットを入れると、可塑性が少なくなりますので、素地を加工し難いです。
多く入れ過ぎると、粘りが無くなり、「パサパサ」した素地になります。
g) シャモットが細か過ぎると、外部からの衝撃力に弱くなります。即ち壊れ易くなるります。
やや粗めのシャモットを使う事で予防できます。
以下次回に続きます。
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