本来なら焼成に付いて述べる番ですが、焼成(窯焚き)の仕方は窯の種類や容積、燃料の違いに
よって大きく変わりますし、窯を焚く人(又は人々)によって個人差が出易く、その方法も大きく異なる
場合が多いです。又、窯の焚き方も、秘密に成っている部分も多々ありますので、焼成の仕方は
省略します。ここでは、一般的に起こる事柄についてお話します。
1) 焼成中に起こる事。
① 焼成が原因で変形する。
) 酸化鉄などの鉄化合物を含む粘土質の素地は、1050℃以上の還元焼成で、変形し易く
成ります。酸化焼成でも変形しますが、影響は少ない様です。
) 変形する理由は、素地が軟化する温度と焼固する温度範囲が狭い為です。
この温度差が100℃以内の場合、起こり易いと言われています。
) 変形予防方法。
a) 素地に荷重が掛からない様に窯詰めする。
窯詰めの際、本焼きで爪を立て重ね焼きする場合や、「とち」を用いて作品を浮かせる等
力が一点に集まる(偏る)方法を取らない事です。
b) 作品の形状に注意する。鉄分の多い赤土などは、白い土に対して軟化点が比較的低い
です。大皿の様に縁部が高台部分より外側に伸びている場合、縁の部分が垂れ下がり傘の
お猪口の様になる場合があります。縁部を大きく張り出したいのならば、赤土の量を減らし、
他の熱に強い土(カオリン、耐火粘土など)を混ぜ合わせる事です。
c) 焼成で最高温度を長く保持した場合や、焼成温度の上昇が遅すぎ、長時間高温に晒した
場合にも変形し易いです。即ち、「寝らし」時間は長過ぎ無い事です。
d) 一番確実なのは、焼成温度を下げる事です。
但し、素地の異なる他の作品と同時に焼成すると、この方法は取れません。
② 焼成による収縮が大き過ぎる。
本焼きでは、必ず作品は収縮します。収縮が大きいからと言って、変形が起こる訳ではありま
せん。縦、横、高さ共同じ割合で縮みますので、元の形の相似形になります。
・ 当然、縮み率が一定でも、作品の大きさによって縮む量は違います。即ち、長さの長い物程
縮む量は大きくなります。同じ一割でも30cmの一割は3cmで、3cmの一割は3mmです。
) 素地に熔剤となる原料が多過ぎると収縮率は大きくなります。
a) 石灰の多い素地では、1040℃(SK-03a)程度から急激に収縮します。
b) 長石を多く含む素地では、1120℃(SK-2a)程度から大きく収縮します。
c) 磁器の素地では、1250(SK-8)~1410℃(Sk-14)で著しく収縮します。
) 収縮率を下げるには、石英、シャモット(焼粉)、カオリン等を加えます。
又、粒子の細かい素地は、縮み量が大きくなりますので、粗めの素地を使う事です。
当然、焼成温度が高く成るに従い、縮む量も大きくなります。
③ 「ひび割れ」は必ず拡大する。
) 素焼き前に毛程の細かい「ひび」がある場合でも、本焼きでは「ひび割れ」は幅、長さ共に
成長します。原因は素地が収縮する為です。例え素焼き前に「ひび」が確認されなくとも、
本焼きで、出現する事も稀ではありません。本焼きで発生した物ではなく、素焼き時に存在
していた物を見逃していた為です。
) 素焼き前又は素焼き後に見つけた「ひび」を補修しても、本焼きで発生する事は多いです。
即ち、濡れた生の土の「ひび割れ」以外、補修困難と見た方が正解です。
) 底割れとは、作品の中心部に「S状」の亀裂が入る事です。
亀裂が大きいと、底の裏側にまで割れが貫通します。
原因は、土の締めが弱い事ですので、良く叩いたり、指先で下に押し付け土を締める事です
轆轤挽きした作品の内側の水分は、確実にスポンジ等で取り除く事です。
・ 「ひび割れ」した部分や補修した部分に、釉を厚めに掛け焼成しても、釉で「ひび割れ」が
埋まる事はありません。
尚、底割れに付いては今迄何度も取り上げていますので、ここでは簡単に述べました。
④ 焼成中の剥離と切れ。
以下次回に続きます。
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