2) 焼成前の確認事項。
⑤ その他。酸化、還元焼成の別、焼成温度、焼成条件等
) 焼成温度。
a) 素焼きの場合は700~900℃の範囲内が多いです。
特に750~800℃程度が一般的ですが、あえて900℃以上の硬めに焼き、釉の吸収を
押さえ、釉を薄く掛ける事もあります。
b) 楽焼の場合は一般に800~900℃で、黒楽の場合には1150~1200℃と高温に
成ります。当然、温度が高い程強度的に強くなります。
c) 本焼きの場合、陶器では1200~1250℃程度。磁器で1250~1300℃が多いです。
市販されている陶器用の釉は、1230~1250℃の物が多く、1180、1200℃の物も
あります。
) 酸化と還元焼成
窯の焚き方には、酸化、還元、中性炎による方法があります。釉にも酸化で焼成した方が
発色が良い物と、還元で焼成すべき物と、どちらでも大差の無い釉があります。
尚、市販されている釉には、酸化か還元か又は両方とも可の表示があります。
a) 電気窯は、基本的には酸化焼成です。勿論、炭などを入れ、還元でも焼成できる電気窯も
市販されています。青織部の様に完全に酸化焼成する必要がある場合には、電気窯が
最適です。特に、銅を使った釉は酸化と還元では発色が、緑~紫~赤と大きく異なります
ので、注意が必要です。 燃料を使う窯でも、酸化焼成は可能ですが、窯全体を酸化焼成に
する事は中々難し様ですので、燃料を使う窯と併用している人も多いです。
・ 窯のカタログを見ると、さも容易に酸化、還元が使い分けれる記載がありますが、現実には
かなり苦労するはずです。
b) 焼成前に酸化か還元かを予め決めておきます。どの様な釉を使うかで決ってしまいます。
実際に、還元を掛ける温度範囲は人によって異なりますが、一般的には950~1200℃
程度です。950℃以前では酸化か中性炎で、1200℃以上では酸化焼成にします。
c) 釉が熔け始めるのが950℃近辺からで、釉中の酸素が自由に動ける状態になります。
1200℃位になると釉の表面はガラス質になり還元を掛けても、釉中の酸素を取り出す事が
出来ませんので、還元を掛けても無意味と言われています。 尚、一番温度上昇に適する
炎は、中性炎と言われています。強還元炎が一番温度上昇が鈍くなります。
d) 電気窯と違い、燃料を使う窯ではどうしても、若干還元が掛り易いです。
酸化と還元炎は、空気(酸素)の供給量と燃料の供給量で決まります。空気が多い場合が
酸性炎となります。一般には、煙突の下にある馬鹿穴を調節し、窯の引きを強くして酸化に
します。 高温に成るに従い燃料の供給は増えるはずです。それに見合う空気量を増や
さなければ、還元に傾きます。
e) 窯の状態を把握する。
イ) 覗き穴から「ろうそく状」の火が吹き出ている場合は、窯の中の圧力が高く、還元焼成の
状態になっています。
ロ) 覗き穴から炎が噴出さず、逆に外から空気が入り込む状態では、窯の圧力は低く、
酸化状態になっています。
ハ) バーナーヘッドから炎が見える場合、その色が青い場合には酸化で、赤又は赤味掛かる
場合には、還元焼成になっています。
ニ) 順調に昇温している場合は、中性炎の場合が多く、それなりに昇温の場合には、酸化炎
温度上昇が極端に遅い場合には、強還元の状態と見て良いでしょう。
) 窯の冷えも窯焚きと同様に大切な条件です。所定の温度に成った後の処理。
イ) 一般に色釉の場合には急冷が良いと言われています。特に鉄釉の黒い釉(黒天目など)
は急冷する事によって発色が良くなると言われています。火を止めてダンパーを全開にして、
煙突の引きを強くし、煙突からの排熱を早くします。但し、窯の扉を少しでも開ける事は厳禁
です。
ロ) 結晶釉と呼ばれる釉では、徐冷にする事で結晶の成長を促し、綺麗な結晶になります。
窯の冷え具合は、窯の壁の厚みに比例して遅くなります。結晶釉の場合には、壁の薄い窯は
早く冷えますので、加熱しながら温度を下げる事に成ります。壁の厚い窯でも同じ様にした
方が、良い結晶が析出します。徐冷する方法として、複数のバーナーがある場合には、何本
かの火を止める。又はガス等の燃料の供給量を減らす(ガス圧を下げる)等、窯の種類や、
窯を焚く人によって違います。又、徐冷中は煙突の引きを弱くし排熱を押さえます。
徐冷の温度範囲は、釉の種類によって若干差がありますが、一般的には1100度程度で
盛んに結晶化が進むと言われ、1050℃程度まで徐冷すれば良しい様です。
以下次回に続きます。
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