1) 焼成中に起こる事。
⑤ 素地土に含まれる不純物。
) 可(水)溶性塩類は、悪さをする。
可溶性塩類とは: カルシウム、マグネシウム、ナトリウムなどの塩化物、および硫酸塩等で
水に溶ける物を言います。これらは自然界に普通に存在する物質で、素地土にも含まれる
場合もあります。但し、水に溶けますので、十分水簸(すいひ)する事で取り除く事が出来る
物質です。
a) 塩類が含まれた土を成形し、乾燥させると、塩類が粉を吹いた状態や結晶として表面に
現れます。又は、焼成すると灰白色や黄色が現出する事もあります。
b) 塩類を含む土を高温で焼成すると「ぶく」が発生します。又、施釉した作品の場合、
釉を着色したり、釉を飛ばしたりします。
c) スカミング(発華現象)を起こす。
塩類の結晶の出た状態で素焼きを行うと、結晶が気孔の中にはい込み固着して取れなく
なります。これをスカミング(スカム)といいます。
・ スカムとは、「泡」や「浮き滓(カス)」を意味する英語です。表面に浮き溜まっている
気泡やカスがスポンジ質の膜状になった物です。
・ スカムのある素地に施釉すると、素地と釉の間に隙間が出来、乾燥と共に釉が剥がれ
ます。又、焼成の際、作品の端の部分が釉飛びを起こす事もあります。
原因は轆轤引きの最終段階で、皮などで水拭きした際、微細な粘土を剥ぎ取り、端が
珪砂の多い組成になる為と言われています。
・ スカムは乾燥が遅い程強く起こりますし、粒子の細かい土ほど遅く現れます。
d) 焼成に有害な塩化物。
ナトリウム(ソーダ、塩)、カリ、石灰、マグネシウム、鉄、アルミニウムの硫化物、燐酸塩や、
塩化物などがあります。
イ) 特に硫酸石灰は焼き物に悪作用をします。石灰と硫酸鉄を含む粘土は、長い間風雨に
晒されると、硫酸石灰と水酸化鉄に成ります。硫酸石灰が作品の端に集まると釉飛びの
原因に成ります。
ロ) 硫酸塩の害を除くには、炭酸バリウムを素地に0.25~0.5%程度加える事です。
2) 窯出しに付いて。
① 大気中と同じ温度まで冷やすとすると、かなりの冷却時間が必要になります。
) 一般には、窯を焚いた時間が、窯を冷やす時間と同じと言われています。
即ち、12時間半掛かって焚いた窯は、12時間半掛けて冷やすと良いと言われていますが、
窯によって窯の冷え方も一様ではありません。実際にはもう少し長めに取る事が多いです。
) 冷却スピードは火を止めた段階が最も温度低下を起こし、時間と共にゆっくりします。
それ故、途中で窯の扉や、覗き穴を少し開け放熱します。その温度は300℃以下が
安全と言われています。
) 冷却時の窯の温度が高い場合に、外気を入れると貫入(ひび)が入り易くなります。
それ故、貫入を入れたい時には、早めに窯の扉を開け放熱します。
又、窯出し直後に、「ピンピン」と音がしますが、これは釉に貫入た瞬間の音です。
) 一般には、100℃以下に成れば、窯の扉を全開しても良いと言われています。
扉を開けたら直ぐにも、窯出しが可能ですが、作品も100℃近くありますので、必ず手袋
(軍手など)が必要です。又、体(又は体の一部)を窯の中に入れて窯出しを行う場合には、
火傷をしない様に、少なくても50℃以下まで温度が下がるまで待つ事です。
) 小さな窯では一人で窯出しを行う事が出来ますが、大きな窯になると数人の人が、仕事を
分担して行います。その際、手渡しで作品をリレーしますが、慎重に渡さないと熱い作品を
落とす場合があります。
) 窯出しした作品は、窯の傍に板や敷物を置き、その上に並べます。なるべく作品の大きさや
作品の種類、釉の種類別に、共同で使う場合には作者ごとに分けて並べます。
) 釉が流れ落ち、棚板などに固着する場合も珍しくありません。
その際には、棚板の裏側から木槌などで叩くと、割合容易に棚板から取り外す事が出来
ます。但し、作品の固着部分には棚板上のアルミナコーチングがくっついてきます。
このアルミナは簡単には取れませんので、ダイヤモンド・ヤスリやグラインダーなどで削り
取り除きます。ダイヤモンド・ヤスリは100円ショップなどに、色々な形の物が有ります。
固着部分を「タガネ」などで、無理に引き剥がすと作品の固着部分が壊れます。
) 時間に余裕があれば、どの位置に置いた作品が、どの様に焼き上がったかを確認しな
がら作業し、記録しておけば次回の参考に成ります。
3) 焼成後に起こるトラブル。
以下次回に続きます。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます