わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 55 釉の濃度は?

2015-01-05 21:29:47 | 素朴な疑問
各メーカーで市販されている釉は、推奨されている適度の濃度が指定されているのが普通です。

勿論、最初から水に溶けた状態で、市販されている釉は、そのまま使用する様に調整されています。

但し、少ない量の釉の場合、ポリ容器に入れられていますし、下に沈殿している場合が多く、外に

出すのが容易では無く、その為濃度も変化し易いのが難点にに成っています。

一方、粉末状の釉(1kg、数kg単位など)が多く市販されてもいますし、ご自分で調合する場合も

粉末状態の場合が多いですので、水(冬場ならお湯)を加えて濃度を調整する必要があります。

当然、釉の濃度によって、釉肌や発色具合に差が出ます。

1)適度の釉の濃度とは?

 昔から言われている事に、釉の厚みは葉書一枚程度が良いと言います。即ち、素焼きした素地に

 施釉し、針などで表面を引っ掻き、釉の断面の厚みを見て判断したと言われています。

 ① 粉末状の釉 1kgには、800~1,000ccの水を加えるのが良い量と言われています。

   濃い目にしたい場合には水800cc程度で、1,000cc程度で普通の濃さになります。

 ② 濃度を計測する用具に、ボーメ計と呼ばれる、ガラス製の細長い「釣りの浮き」の様な物が

   有ります。水に溶かした釉の容器の中に投げ込み、垂直に立ったボーメ計のその沈み加減を

   目盛りで読み、濃度を計測する物です。陶芸材料店などで市販されています。

 ③ 一般には、容器の中に手を入れて掻き混ぜた際、手に着いた釉の汚れ具合で判断する事が

   多いです。手の色が判別出来る状態では、薄過ぎです。手に着いた釉が、下方に流れ落ちない

   場合は、濃過ぎです。

 ④ 濃い場合には、水を加えます。薄過ぎた場合は、新たに釉を加える事に成ります。但し後から

   同じ釉を加えるのは面倒ですので、濃度が不明な釉の場合は、予め中の水を取り除き、濃い目

   にしてから水を加えた方がより簡単です。即ち、濃度が不明な場合は、しばらくその釉を

   使っていない事が多く、釉と水が分離していますので、容易に水のみを抜く事が出来ます。

   水を抜いた後、掻き混ぜ濃度を確認する事です。

2) 濃過ぎた場合と、薄過ぎた場合にはどうなるか?

   釉はガラス質ですので、濃い釉では当然ガラス質は厚くなります。即ち、機械的な強度は

   増します。更に、発色具合も濃い目の色に成ります。薄めの場合は、濃い目とは逆の現象に

   成りますし、予想外に発色する事もあります。

 ① 濃過ぎた場合どうなるか?

  ) 志野釉の様に、熔け難い釉の場合には、釉が熔けずに熔け不足に成り易いです。

    釉によっては縮れ、素地から盛り上がった部分と、禿た状態になります。

  ) 結晶釉の様に、流れ易い釉では流れ過ぎて、棚板を汚す場合も珍しくありません。

  ) 釉肌に貫入が入り易い特徴があります。ガラス質が厚い場合、素地との収縮率に差が

    出易く、普通貫入が入らない釉でも、貫入が入り易いです。

 ② 薄過ぎた場合はどうなるか?

  ) ガラス質が薄い為、表面は「ザラツキ」光沢はありません。

  ) どの様な釉でも、極端に釉が薄い場合、茶褐色やオレンジ色になります。

    オレンジ色は素地が白い場合に出易いです。

  ) 乳濁釉が薄い場合、白くならず透明釉の様に成ります。その他の釉でも薄い場合は本来の

    色には成りません。単に色が薄くなるだけでなく、全く異なった色に成る事もあります。

    黒天目釉なども薄い処は茶色に成る場合もあります。尚、冷える温度が遅いと茶色になり

    ます。

 ③ 一つの作品に濃淡を付ける方法で、変化のある釉肌や発色を行う方法もあります。

  勿論、釉の濃淡は、単に釉を二重掛けする事によっても得られます。部分的に二重掛けする事で

  好みの位置に好きな景色を作りだします。但し二重掛けすると、釉の乾燥が遅くなります。

  なるべく濃く塗りたい場合には、一度施釉後乾燥させてから、その上に施釉する事です。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 素朴な疑問 54 型の作り方 2? | トップ | 素朴な疑問 56 彫像とは? »

コメントを投稿

素朴な疑問」カテゴリの最新記事