3) 相性が問題になるのはどうゆう場面か?
釉は単体で施釉する事を前提にして調合されています。その為、異なる釉同士を重ね合わせると、
思わぬ結果を招く事もあります。又、基本的には、釉同士を混ぜ合わせて施釉する事はしません。
① 厚掛けによる相性の良し悪し。 以上までが前回の話です。
② 焼成温度の差のある釉の相性の良し悪し。
基本的には同じ温度で焼成する釉(ある温度範囲内の釉)を使います。しかし実際には、焼成
温度にかなりの差がある釉を使う事もあります。
例えば、1180℃の釉と1230℃の釉を重ね掛けし、1230℃で焼成する場合などです。
この場合には、1180℃の釉は熔け過ぎる感があり、成分によっては流れ落ちる可能性もあります
但し、どちらを先に掛けるかによって効果が変わります。即ち、1180℃の釉を下(先)に塗ると
早く熔ける為、上(後)に塗った釉は素地との密着度が弱くなりますので、釉全体が下に引き
ずられる事もあります。逆の場合には、下の釉の焼成温度が高い為、表面のみが流れる状態に
なります。
③ 流れ易い釉を重ね掛けする場合、流れ易い釉と流れ難い釉との相性。
ⅰ) 流れ易い釉同士を重ね掛けすると、両方の釉が混じり合いながら、下に流れ落ち易くなり
ます。一般には筋状又は波状に流れる場合が多い様ですが、混ざり合った模様は予想不可能な
模様に成る事もあります。この組み合わせでは、棚板まで釉が流れる恐れがありますので、
底周辺の施釉は出来るだけ避けるか、底との隙間を多く取っておく必要があります。他の方法
として、片方又は両方の釉を若干薄く掛ける事です。厚く掛けると流れる量も増えます。
更に、混じりあった釉の色も単体の場合とは異なります。特に白っぽい釉と他の色の付いた釉
を重ねる場合、濃い釉の色が本来の色より薄くなり勝ちです。例えば、器の下部に白マット釉
を上部に黒マット釉を掛けた場合、上部が黒で下部が白になり、両方が掛かった(二重掛け)
部分はグレーに発色します。又、黄色釉に青磁釉を掛けると、二重にかかった部分が若草色に
発色する事もあります。
ⅱ) 流れ易い釉と流れ難い釉の組み合わせでは、流れ難い釉を下に塗り、流れ易い釉を上に
塗ると安全ですが、逆にすると全体に流れ落ちます。
流れ難い釉の代表的な物の一つに志野釉があります。この釉は他の釉に対し相性はすこぶる
悪い様です。下記⑦で述べる様な、色々なトラブルの原因に成りますのでなるべく単体で使う
事をお勧めします。
ⅲ) 流動性のある釉には、焼成温度を若干下げるか、寝らし時間を短くして、流れ落ちるのを
防止すると良いでしょう。
④ 色釉の上に透明釉を掛けた場合。
色釉の一部をマスキングし、その部分に下絵付けを施す事は良く行われています。下絵付けの
部分には、透明系の釉を掛ける必要がありますので、色釉の一部は二重掛けになります。
二重掛けした部分と、単色の色釉の部分では焼成で色の変化は余り見られません。場合によって
は色釉の全体に透明釉を施す方が、施釉の行為が簡単かも知れません。
⑤ 光沢のある釉と光沢の無い釉との相性。
どちらを下に掛けても、二重に掛かった部分には光沢が発生し易いです。即ち、光沢の釉の方が
優勢になる事が多い様です。
⑥ 結晶釉と結晶釉でない釉の二重掛け。
二重に掛かった部分では、結晶が起きない可能性が大きいです。
⑦ 重ね掛けで起こり易い事柄。
釉の剥がれ、釉の流れ、釉の色の変化等に付いて述べて来ましたが、その他に、釉に「あばた」
や「気泡」の発生、釉の「煮え」が発生する場合もあります。
主な発生原因は、釉が均一に熔けず一部の熔け過ぎ(煮え)、熔ける温度に差がある(あばた)
二重掛けのタイミングの悪さ(気泡)などがあります。
4) 二重掛けの方法と、タイミングに付いて。
以下次回に続きます。
釉は単体で施釉する事を前提にして調合されています。その為、異なる釉同士を重ね合わせると、
思わぬ結果を招く事もあります。又、基本的には、釉同士を混ぜ合わせて施釉する事はしません。
① 厚掛けによる相性の良し悪し。 以上までが前回の話です。
② 焼成温度の差のある釉の相性の良し悪し。
基本的には同じ温度で焼成する釉(ある温度範囲内の釉)を使います。しかし実際には、焼成
温度にかなりの差がある釉を使う事もあります。
例えば、1180℃の釉と1230℃の釉を重ね掛けし、1230℃で焼成する場合などです。
この場合には、1180℃の釉は熔け過ぎる感があり、成分によっては流れ落ちる可能性もあります
但し、どちらを先に掛けるかによって効果が変わります。即ち、1180℃の釉を下(先)に塗ると
早く熔ける為、上(後)に塗った釉は素地との密着度が弱くなりますので、釉全体が下に引き
ずられる事もあります。逆の場合には、下の釉の焼成温度が高い為、表面のみが流れる状態に
なります。
③ 流れ易い釉を重ね掛けする場合、流れ易い釉と流れ難い釉との相性。
ⅰ) 流れ易い釉同士を重ね掛けすると、両方の釉が混じり合いながら、下に流れ落ち易くなり
ます。一般には筋状又は波状に流れる場合が多い様ですが、混ざり合った模様は予想不可能な
模様に成る事もあります。この組み合わせでは、棚板まで釉が流れる恐れがありますので、
底周辺の施釉は出来るだけ避けるか、底との隙間を多く取っておく必要があります。他の方法
として、片方又は両方の釉を若干薄く掛ける事です。厚く掛けると流れる量も増えます。
更に、混じりあった釉の色も単体の場合とは異なります。特に白っぽい釉と他の色の付いた釉
を重ねる場合、濃い釉の色が本来の色より薄くなり勝ちです。例えば、器の下部に白マット釉
を上部に黒マット釉を掛けた場合、上部が黒で下部が白になり、両方が掛かった(二重掛け)
部分はグレーに発色します。又、黄色釉に青磁釉を掛けると、二重にかかった部分が若草色に
発色する事もあります。
ⅱ) 流れ易い釉と流れ難い釉の組み合わせでは、流れ難い釉を下に塗り、流れ易い釉を上に
塗ると安全ですが、逆にすると全体に流れ落ちます。
流れ難い釉の代表的な物の一つに志野釉があります。この釉は他の釉に対し相性はすこぶる
悪い様です。下記⑦で述べる様な、色々なトラブルの原因に成りますのでなるべく単体で使う
事をお勧めします。
ⅲ) 流動性のある釉には、焼成温度を若干下げるか、寝らし時間を短くして、流れ落ちるのを
防止すると良いでしょう。
④ 色釉の上に透明釉を掛けた場合。
色釉の一部をマスキングし、その部分に下絵付けを施す事は良く行われています。下絵付けの
部分には、透明系の釉を掛ける必要がありますので、色釉の一部は二重掛けになります。
二重掛けした部分と、単色の色釉の部分では焼成で色の変化は余り見られません。場合によって
は色釉の全体に透明釉を施す方が、施釉の行為が簡単かも知れません。
⑤ 光沢のある釉と光沢の無い釉との相性。
どちらを下に掛けても、二重に掛かった部分には光沢が発生し易いです。即ち、光沢の釉の方が
優勢になる事が多い様です。
⑥ 結晶釉と結晶釉でない釉の二重掛け。
二重に掛かった部分では、結晶が起きない可能性が大きいです。
⑦ 重ね掛けで起こり易い事柄。
釉の剥がれ、釉の流れ、釉の色の変化等に付いて述べて来ましたが、その他に、釉に「あばた」
や「気泡」の発生、釉の「煮え」が発生する場合もあります。
主な発生原因は、釉が均一に熔けず一部の熔け過ぎ(煮え)、熔ける温度に差がある(あばた)
二重掛けのタイミングの悪さ(気泡)などがあります。
4) 二重掛けの方法と、タイミングに付いて。
以下次回に続きます。
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