筆者はもともと文庫本を旅に持って行ってつれづれに読むのが好きでしたから、旅に出なくなってからも文庫本を読み続けています。
そしてこの一年ほどの間に、今野敏の魅力にとりつかれました。
今野敏は警察小説の分野で多くの作品を発表しています。
警察小説といっても単に犯人捜査の模様を描くだけでなく、警察官の生き様を描くもの、警察官の仲間意識や友情を描くもの、警察官同士のお互いのつきあい方を描くもの、組織の論理と自己の生き方の矛盾を描くもの、家族小説とも言える離婚や子どもとの関係を描くもの、と警察小説をいろいろなジャンルに発展させながら警察小説を多作してきました。
また、今野敏はシリーズ物が多い作家という評判があります。
有名なものを順不同でいえば、
安積班シリーズ
警視庁捜査一課・碓氷弘一シリーズ
隠蔽捜査シリーズ
潜入捜査シリーズ
横浜みなとみらい署シリーズ
ST 警視庁科学特捜班シリーズ
渋谷署強行犯係シリーズ
と枚挙にいとまがありません。
(上記の文庫本発刊一覧は末尾に記載します)
安積班シリーズ
(安積班シリーズ 警視庁神南署)
今、特に気にかかっているのが安積班シリーズです。
でも、一冊読むと次が読みたくなって、直ぐに全部読み終わってしまうからと時間をかけて、間隔をあけて読むことにしています。
既に、18冊の内17冊を入手しています。
このシリーズの特徴は、安積警部補を取り巻く同僚や部下、警視庁捜査一課の刑事、刑事部長、捜査一課長、他の所轄警察署の刑事との人間関係の機微、家族関係の問題、など様々な人生模様です。
特に部下との関係はデリケートですが安積警部補はいろいろと考えながら発言します。そんな中で安積警部補の真実を追究する姿が良く描かれています。
安積班は、日本経済の浮き沈みに合わせて班全体がいくつかの所轄署に転属しますが、人間関係は余り変わらないまま20年以上を過ぎてきています。
また、安積警部補と他の人との会話が軽妙で、機知にあふれています。
相手に対する尊敬の念と愛情を持っていることが、警察物という暗い物語の中で救われ感を与えてくれます。
警視庁捜査一課・碓氷弘一シリーズ
(碓氷弘一シリーズ エチュード)
警視庁捜査一課・碓氷弘一シリーズも面白いシリーズです。
運悪く碓氷警部補が宿直の日に限って起きる様々な事件を通して、柔軟に解決する姿を通じて世相を描くという手法ですが、秋葉原事件から時代が飛んで、犯人像をプロファイリングする美人の心理調査官と組まされた碓氷警部補が次第に仲間意識を醸成していく様がとてもほほえましいのです(シリーズ第4作エチュード)。その心理調査官とは第6作マインドで再び組むことになります。
隠蔽捜査シリーズ
(隠蔽捜査シリーズ 隠蔽捜査)
隠蔽捜査シリーズも好きです。
警察庁長官官房総務課長の竜崎伸也警視長と警視庁刑事部長の伊丹俊太郎警視長は同期のキャリア官僚ですが、考え方が異なることが多く、対立しながらも利用し合い、いろいろの事案を解決してゆくという筋立てで、竜崎警視長はシリーズの主人公ですが、伊丹警視長が主人公の作品もあって、おもしろさが倍増するというシリーズです。
潜入捜査シリーズ
(潜入捜査シリーズ 潜入捜査)
潜入捜査は奇想天外なシリーズです。
佐伯連(さえきのむらじ)の血を引く主人公の佐伯部長刑事は、警視庁から環境省の出先機関に出向し、「佐伯流活法」という武術で悪をくじくという話です。
みなとみらい署シリーズ
(みなとみらい署シリーズ 逆風の街)
横浜みなとみらい署シリーズは神奈川県警みなとみらい署の諸橋係長と相棒の城島を主人公とした痛快なシリーズだそうですが、入手しただけでまだ読んでいません。
以下、文庫本の表紙画像は添えませんが、
ST 警視庁科学特捜班と呼ばれるシリーズは、個性豊かなメンバーが科学的に事件を解決するというシリーズです。格好良く事件を解決するという読みやすいのが特徴のシリーズで、キャリア組の班長さんが控えめの役割を演じています。
渋谷署強行犯係シリーズは、渋谷署強行犯係りの刑事・辰巳と整体師・龍門が関わる物語で龍門の琉球空手が冴えるシリーズです。
これらの文庫本は、BOOK-OFF か amazon の古本店で入手しました。
amazon では、本が \1 で配送料が \257 なんてものもあり、数日経つと自宅に着くので、わくわくしながら待っていることもあります。
文庫本リスト
安積班シリーズ
二重標的 ケイブンシャ文庫
虚構の殺人者 ケイブンシャ文庫
硝子の殺人者 ケイブンシャ文庫
蓬莱(講談社文庫)
イコン(講談社文庫)
警視庁神南署(ハルキ文庫)
神南署安積班(ハルキ文庫)
残照 (ハルキ文庫)
陽炎 (ハルキ文庫)
最前線 (ハルキ文庫)
半夏生 東京湾臨海安積班 (ハルキ文庫)
花水木 東京湾臨海安積班 (ハルキ文庫)
安積班読本 東京湾臨海安積班(ハルキ文庫)
夕暴風 東京湾臨海安積班 (ハルキ文庫)
烈日 (ハルキ文庫)
晩夏 (ハルキ文庫)
捜査組曲 (ハルキ文庫)
潮流 (ハルキ文庫)
警視庁捜査一課・碓氷弘一シリーズ
1、触発 (中公文庫)
2、アキハバラ (中公文庫)
3、パラレル (中公文庫)
4、エチュード (中公文庫)
5、ペトロ (中公文庫)
6、マインド (中公文庫)
隠蔽捜査シリーズ
1、隠蔽捜査 (新潮文庫)
2、果断(2) (新潮文庫)
3、疑心 (新潮文庫)
4、初陣(3.5) (新潮文庫)
5、転命(4) (新潮文庫)
6、宰領(5) (新潮文庫)
7、自覚(5.5)(新潮文庫)
潜入捜査シリーズ
1、潜入捜査 (実業之日本社文庫)
2、排除 (実業之日本社文庫)
3、処断 (実業之日本社文庫)
4、罪責 (実業之日本社文庫)
5、臨界 (実業之日本社文庫)
6、終局 (実業之日本社文庫)
横浜みなとみらい署シリーズ
1、逆風の街 横浜みなとみらい署暴力犯係(2006年6月 徳間文庫)
2、禁断 横浜みなとみらい署暴対係 (2013年5月 徳間文庫)
3、防波堤 横浜みなとみらい署暴対係 (2014年10月 徳間文庫)
4、臥龍 横浜みなとみらい署暴対係(2016年2月 徳間書店)
ST 警視庁科学特捜班シリーズ(講談社文庫)
1、ST 警視庁科学特捜班 文庫版(2001年6月、新装版 2014年5月)
2、ST 警視庁科学特捜班 毒物殺人 文庫版
3、ST 警視庁科学特捜班 黒いモスクワ 文庫版(2004年1月)
4、ST 警視庁科学特捜班 青の調査ファイル文庫版(2006年5月)
5、ST 警視庁科学特捜班 赤の調査ファイル文庫版(2006年8月)
6、ST 警視庁科学特捜班 黄の調査ファイル文庫版(2006年11月)
7、ST 警視庁科学特捜班 緑の調査ファイル文庫版(2007年2月)
8、ST 警視庁科学特捜班 黒の調査ファイル文庫版(2007年5月)
9、ST 警視庁科学特捜班 為朝伝説殺人ファイル文庫版(2009年7月)
10、ST 警視庁科学特捜班 桃太郎伝説殺人ファイル文庫版(2010年11月)
11、ST 警視庁科学特捜班 沖ノ島伝説殺人ファイル文庫版(2013年6月)
渋谷署強行犯係シリーズ
1、虎の尾(2017年3月 徳間文庫)
2、義闘 (2008年11月 徳間文庫)
3、宿闘 (2009年3月 徳間文庫)
4、密闘 (2011年5月 徳間文庫)