最上稲荷が日本三大稲荷といわれていることは、岡山県人なら誰しもが知るところですが、以前、小豆島の寒霞渓が日本三大渓谷美といわれていることで調べたところ他の二つが見当たらなかったことや、日本一と思っていた東粟倉村の愛の鐘がいつの間にかその座を奪われていたことなどを踏まえて、実際のところ、今どうなのか調べてみることにしました。
この三大が、何を基準に三大といっているのかが肝心なところですが、一般的には正月三が日の初詣の参拝者数か、もしくは神社上の格付けでしょう。
まず参拝者数ですが、どうやって算出しているのでしょうね?
広島の厳島神社などは、島なのでフェリーに乗る人を参拝者とし、その合計を数えるそうですが、島ではないところの神社で個々の人数をカウントするのは不可能ですので、一般的には次のような面積で測る数え方をしているそうです。
神社の入り口に前と後ろに二つづつの目印を付けておき、前と後ろの目印の間に10人入ると仮定するなら、実際に数える際に後ろの目印のところにいた人が前の目印までいけば10人移動した、つまり10人来場したということとして数えます。
これを繰り返して全体の参拝者数を算出する。うーむ、判ったような、そうでないような?
ちなみにお正月三が日の初詣の参拝者数は、以下のとおりでした。
(同じ年度の比較ではありませんが大筋このくらいではないでしょうか?)
京都市 伏見稲荷 269万(H20)
愛知県 豊川稲荷 120万(H16)
佐賀県 祐徳稲荷 63万(H16)
茨城県 笠間神社 62万(H16)
岡山県 最上稲荷 56万(H16)
これを見ますと、伏見稲荷、豊川稲荷は文句ないところですが、あとの三社は微妙なところですね。最上稲荷が少し不利なようです。でも年によっては多少変動もあるでしょうから、あながち誤りということでもないようです。
ということは、最上稲荷の場合、根拠は参拝者数でしょうか。
次に根拠を神社の格付けとした場合はどうなのでしょうか?
この「おいなりさん」と称され親しまれている稲荷神社ですが、その数なんと32000社にものぼるそうです。日本三大稲荷と呼ばれる大きなものから、まちの小さな神社、さらにビルの屋上に祀られているものまでさまざまです。
日本各所にある神道上の稲荷神社の総本社は京都市伏見区にある伏見稲荷大社です。
また神仏習合思想においては仏法における荼吉尼天が本地仏とされています。(その総本社は豊川稲荷)。ということは格からいってもこの2社は例外なくはずせませんね。
年代別に見ても、伏見稲荷大社は711年、あの枕草子作者の清少納言も詣でたといいますから文句のつけようがありません。
大日本史等の歴史書や稲荷信仰事典では、総本社の伏見稲荷大社のほか祐徳稲荷神社、豊川稲荷を日本三大稲荷としています。その他の文献には笠間稲荷、竹駒神社、最上稲荷などが候補に上がっています。尤も、総本社である伏見稲荷大社では、「三大稲荷は地域により異なる」として、三大稲荷の3社を限定することはしていません。
しかし、これらの神社は実際、地元に深く信仰が根付いているのも事実であり、地元では決して伏見に負けない知名度である(むしろ、伏見から勧請した稲荷信仰がしっかりと根付いている)という郷土の誇りの表れと見なすこともできるといえます。
いくつかの稲荷神社や稲荷を祀る寺院では、「当社は日本三大稲荷の一つ」ということを宣伝文句としています。しかし、それらの内容は寺社によって異なっています。
以下に、日本三大稲荷とされている寺社の一部と、各寺社が他の2つを何としているか(「不明」は他の2つの名を挙げていないもの)を調べてみました。
?祐徳稲荷神社(佐賀県鹿島市) - 伏見、最上
?豊川稲荷(愛知県豊川市) - 伏見、祐徳
?笠間稲荷神社(茨城県笠間市) - 伏見、祐徳
?最上稲荷最上稲荷教総本山妙教寺(岡山県岡山市) - 伏見、豊川
?竹駒神社(宮城県岩沼市) - 伏見、笠間
?鼻顔稲荷神社(長野県佐久市) - 伏見、豊川
?千代保稲荷神社(岐阜県海津市) - 伏見、豊川
?瓢箪山稲荷神社(大阪府東大阪市) - 伏見、豊川
?草戸稲荷神社(広島県福山市) - 伏見、豊川