未熟なカメラマン さてものひとりごと

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限界集落の柿の里で新たな干し柿づくりを守り伝える 尾道柿園 広島県尾道市御調町菅

2024-11-17 16:17:53 | 干し柿
令和6(2024)年11月4日(月)祝日

もうそろそろ柿のカーテンを見ることができるのではと、昨年と同じころの11月4日に御調町の尾道柿園を訪ねました。天候は上々、青い空とむぎたての柿のオレンジとのコントラストは、一服の清涼感さえ与えてくれます。
標高が高いので、空気もおいしいし、眺望も抜群。一番の景観は柿棚の下に広がる雲海とのコンビネーションですが、条件的になかなかお目にかかれるものではありません。

期待しながら、目的地に着き、柿棚を見ると、なんということでしょう。一面のオレンジのカーテンを想像していたのに、掛かっているのはほんの一部分だけ。今年は、裏年と聞いていたので取れる量は少ないことは想像できていましたが、それにしても少なすぎます。



菅野地区


たわわに実った柿の古木 串柿用の柿でしょうか


寂しい柿棚 今年は遅れているのかと思いましたがそうではないようです

柿渋工房を訪ね、社長の宗八重子(むねやえこ)さんにお話を伺いました。
このところ、雨が多く気温も高かったので、つるした柿にカビがきて、多くがダメになったそうです。良い干し柿づくりには、朝晩の寒暖の差が大きいこと、霧が発生しないこと、風がよく通ることなどの条件が必要です。
カビが来る前にまだ干し柿になっていない、果肉の柔らかい状態のものを道の駅「クロスロードみつぎ」にも出荷しているのだとか。
それでも、パートさん2名を含むスタッフ5人で、気象条件を見ながら、作業にかかっているそうです。作業の状況にもよりますが、今年は、昨年のような見事な柿のカーテンを見ることはできるのでしょうか。むく柿の数は例年、2万数千個だそうです。気の遠くなるような作業ですね。


(限界集落)

この菅野地区、世帯数は6世帯、11人だそうですが、宗さんがこちらに来られたときは11世帯あったそうですから、着実に過疎化が進んでいます。
岡山県矢掛町の山ノ上地区も、干し柿の里として知られていますが、こちらも高年齢化、人口減少で限界集落と言われています。
しかし、立地を比較すると、菅野地区は圧倒的に条件が悪いように思えました。

この菅野地区、江戸時代から続くお正月飾りの串柿の一大産地で当時150軒もあった柿農家も、串柿の需要が少なくなってほとんど無くなってしまったそうです。
そんな中、法人を立ち上げ、この里山にかつての賑わいを取り戻そうと、新しく西条柿の栽培に取り組み、干し柿づくりを始めた亡きご主人。その意思をついで前向き頑張る八重子さんには頭が下がる思いです。
そして、明るい材料が一つ、地域おこし協力隊の若い男性が一人加わったとか。嬉しそうに話す八重子さんに笑顔が見え、私も少し安心した気持ちになりました。



柿渋工房から見るテラスと遠い山並み 注文するのはいつも紅茶と干し柿のセットです


標高300mの山並み


手前が先代社長が育てた西条柿


オレンジのカーテン むぎたてのようです


反対側から


急ピッチで作業が進められています


かわいいヤギが2匹 人懐こいです


民家に植えられているシルバーの草花


ムラサキシキブ


アップです

昨年の様子


昨年の記事 
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山里の晩秋を彩る干し柿の里を訪ねて 広島県尾道市御調町菅野地区

2023-11-09 19:38:57 | 干し柿
訪問日:令和5(2023)11月5日(日)

私の好きなテレビ番組、NHKの『ニッポンの里山 ふるさとの絶景に出会う旅』で放映された、尾道市御調町の柿農家の伝説の干し柿のカーテン。旬の頃になったらぜひ訪ねてみたいと心待ちにしていました。
場所の確認のため10月末ごろ一度訪ねましたが、想像以上の山の中で、びっくりしました。
そして、11月に入り状況確認のため電話を入れると、現在、3分の1ほど掛かっているとか。ちょっと早いかもと思いながらも待ちきれず出かけたのが、2日後の11月の5日でした。


菅野地区は小さな小さな山里です


6世帯ほどの小さな集落です


柿の林が斜面いっぱいに広がっています。一帯にある柿の木は3000本とか


熟した柿もありました


山をくねくね上った先に突然姿を現します


柿のカーテン 柿棚の半分が完成。まさに皮むきの最盛期です。

秋晴れで気持ちの良い朝でした。
標高300mの山の頂き付近に、軒を連ねる民家。青い空と、オレンジのカーテンの柿棚が実に絵になります。この風景が撮りたかったのです。伝説の柿農家は企業を立ち上げ、株式会社尾道農園となっています。
尾道柿園へは、途中に案内板が出ているので迷うことはありませんが、道が狭いので注意が必要です。
専用の駐車場はありませんが、「無断駐車OK」と書かれた看板付近に数台、停めることができます。正面に大きな民家がありますが、尾道柿園は奥側のお宅。緩い坂道を歩くと軒先に吊るされた干し柿が見えてきます。その奥に作業場、4~5人のスタッフの方が皮むきの作業中でした。



軒先に陽光を受けて熟成中。白壁にシルエットが映っています。


柿の里みつぎ町と書かれた幟。無断駐車OKの案内板。車はここに停めます。


柿の老木。樹齢250年のものもあるそうです。


斜面にキクの花がありました。

いよいよオレンジのカーテン・柿棚へ


「写真を撮らせていただいていいですか?」と声を掛けると、
「どうぞ!」と、こころよい返事。



尾道柿園の入り口です


手前右側が作業場。4~5人の皆さんが皮むきの真っ最中でした。西条柿は縦に4つの溝があるため、機械では剥けません。


左手前が小さくなっているのは一番早くかかった柿と思われます


見事なボリューム。竹串で二重になって掛かっています。


整然と並ぶ吊るし柿。尾道柿園では日本でも少ない完全天日乾燥を行っています。


間はこのようになっています。光を十分に受けるため柿棚の間隔は十分にとってあり、傾斜を利用して高さをも計算されて効率のよい配置となっています。


青空とオレンジ色のカーテン。整然と並ぶさまが実に美しい


陽光に輝くむいたばかりの西条柿。西条柿は、広島県東広島市発祥の渋柿ですが、そのほとんどが中国地方で生産されており、栽培面積では島根県が日本一となっています。


完成品ではありませんが、甘さが伝わってくるようです。


反対側からみたところ


どこから見ても絵になります


まさに秋の風物詩です


かわいいヤギが2頭いました

尾道柿渋工房

しばし撮影のあと、立ち寄ったのが、柿渋工房。コーヒーをお願いしましたが、「干し柿とのセットもありますよ!」とのことだったので、じゃ、それでと注文すると、その干し柿の何と甘いこと。

そこでいろんなお話をさせていただきながら、まったりした時間を過ごさせていただきました。眺めが良くて、静か、心地よいBGMが流れ、ゆっくりとした時間が流れています。



工房の前はご覧のような山並み 眼下には雲海が広がることも


柿渋工房の全景。入り口が分かりにくいのですが、右にぐるっと回り込んだところにあります


柿渋、柿酢や柿渋染めの商品の購入や、カフェとして景色を眺めながら干し柿やドリンクを味わうこともできます。


センスのいい店内


ディスププレイ用の大きな熟した柿


レトロなアイテムがいろいろ


デッキでも味わえます


ウクレレも


こちらは薪ストーブ この建物は、クラウドファンディングで資金(目標額:500万円)を得て、築50年の民家をリノベーションしたもの。もともとは2階建でしたが、ストーブの煙突を設けるため平屋にしたそうです。


ピザの窯もありました


こちらは柿酢。西条柿と、上丸柿(じょうがんがき)の2種類があります。


コーヒーと干し柿のセット。まったりとした時間が過ごせます。


西条柿の干し柿。その甘さにびっくり。


柿渋で塗られた天井。見た目もきれいです。


柿渋は、防虫、抗菌、防水、防腐に効果があると言われています。


串柿。御調町(みつぎちょう)は370年の歴史をもつ串柿の一大産地でしたが
近年は生産者の高齢化とお正月の重ねもちのお飾りとしての需要も減り、生産量は減少していました。

串柿の生産が減少しても地域に多く残る柿を生かし、干柿・柿酢・柿渋の製造販売が本格的に行われています。
400年受け継がれてきた歴史と風土の上に、故郷への思いによって蘇った〝柿の里〟。
ここで育った柿を使い、干し柿、柿酢、柿渋など、この里山に伝わる柿の実の製品を、誠実に、ひとつひとつ丁寧に手作りされています。


尾道柿園 ホームページ
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干し柿の里 限界集落の山ノ上地区を訪ねて 岡山県矢掛町小田

2022-12-02 23:14:42 | 干し柿
訪問日:令和4年11月14日(月)

地元・山陽新聞に矢掛町小田・山ノ上地区の干し柿づくりが始まったとのニュースが掲載されていました。この時季の風物詩、むぎたてのオレンジ色の柿が連なって垂れ下がる様子は被写体としては申し分ありません。
目的地まで、車で15分ほど、ただ前回の訪問では、近道を走り道に迷って出るに出られない状況になって大変苦労した思い出がありました。なので、今回は、少し遠回りですが、井原線小田駅を北上し、山ノ上公会堂を目指すルートにしました。



山ノ上農産物直売所 営業時間:毎週土曜日曜 9:00~13:00


12月の第3日曜日には地域の方たちの協力により「山ノ上干柿まつり」が開催されます。提供:山ノ上HP


大名行列のポスターが貼ってありました


干し柿の里 山ノ上案内図

目的地・山ノ上公会堂に到着し、掲示板などを眺めていると、シニアカーに乗ったご老人がするするやってきて目が合いました。こんにちはと軽く会釈をすると「以前、どこかでお会いしましたかな?見覚えがあるような?」と尋ねられたので、「いえ、ないと思いますよ」と答えてから、いろんな話を伺いました。山ノ上は3地区あり、ご老人のお宅は江戸時代から続く旧家で、地区の原点だとおっしゃっていました。住人、特に若者が減り寂しくなったとか。

それでも干し柿まつりには、この広場がいっぱいになるほど人がやってきて賑わうそうです。自治会の役員を経験され、現在の姿にするのに随分尽力されたそうです。90歳になられるこのお年寄りは、まだまだお元気。気づくと30分ほどの立ち話になっていました。



山あいにあるビニールハウス


地区には、約650本の柿木があり、年間約13万個の干柿が生産されているそうです


お礼を言って、カメラを持ち散策に出かけます。ちょうど三叉路のところに石灯篭がありました。特徴のある凹凸の表面で貝殻成分を含む独特の岩は浪形岩と言われ、井原市野上町から小田のこの地区にかけて、かつて海底が隆起した独特の地層を形成しています。総社市吉備路国分寺のこうもり塚古墳の石棺もこの地域の石が使われていました。






干し柿の多くは、ビニールハウスの中で、管理されています。無断で立ち入ると不法侵入になりますので、観光客といえども、そこのマナーはしっかり守らなければなりません。遠目から撮影するだけですが、近くに1軒だけオープンで大量の干し柿を見ることができるお宅があります。
この日は、不在のようでしたので、遠く道路から撮らせていただきました。この地域一帯は中国山地のすそ野に位置し、寒暖差がはっきりして霧が発生しないという気象条件が干し柿つくりに適しているのだそうです。天気のよい日には、遠く瀬戸内海や四国山脈も見ることができるようです。山の傾斜地には、人出不足なのでしょう。まだいっぱい実のなった柿の木が放置されていました。



有難いオープンでの干し柿 こちらのお宅は毎年このように吊るされています


大きな扇風機で風を送っていました


大変な作業です


浪形岩で造られた常夜灯は、町指定の重要文化財です


山の斜面に連なる柿の木


ススキが揺れる晩秋の里


抜群の眺望 条件がよければ瀬戸内海や四国山脈が見えるそうです


とても美しい田舎の景色

山ノ上地区の高齢化率は、3年前と比べ着実に高くなっており限界集落の道を突き進んでいます。2017年と2022年の比較すると、ご覧の通りとなっています。
住人の数 49人 → 36人
高齢化率 61% → 78%

こうして撮影を楽しんだあと、矢掛町・大通寺から美星町鬼が嶽に向けて出発しました。鬼が嶽は、国の名勝にも指定されており、秋のこの時季は特に紅葉がきれいで目を見張るようです。さて見ごろかどうか、行ってみてのお楽しみです。

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