剣山頂上付近。小学生ぐらいの女の子がピースサインで記念写真に納まっていました。
(前回のつづき)
この方が、小説に出てくる、山小屋を管理する佐川家2代目の典夫のモデルとは、大いにびっくりすると同時に、とても貴重な方に出会ったといううれしさから、「すみません、記念に写真を撮らせてもらっていいですか」と返事を聞くと同時にシャッターを押してしまいました。終始にこやかな笑顔で答えてくれ、人の良さが顔に表れている感じがします。「でも。小説の典夫は、振られてしまったが、私は振られていませんよ」と冗談を返してくれました。原作者の宮尾登美子は、持病を抱えていたため、剣山の頂上には登ることができませんでしたが、この典夫さん、約1時間、取材に応じたそうです。小説の登場人物には、実際にそれと同じような人物が存在するが、内容はまったく違うそうです。
あとで、調べたところによると、この方は、新居綱男(にいつなお)さんといい、剣山頂上ヒュッテの2代目管理人で、現在は3代目夫婦に店を任せてもっぱら、外で活躍されているようです。剣山といえば、新居綱男といわれるほど有名で、人は、彼のことを「剣山の守り神」と形容しています。その人柄を慕い、大勢の登山者が新居さんの顔を見るために剣山にやってくるそうです。剣山の自然や植物の本も出版。NHKのBS「日本の百名山」では、昨年まで案内人をつとめたそうです。
さて、山野草の話を聞きながら、頂上ヒュッテまでやってくると、ここに植えてある2か所のキレンゲショウマを見せていただきました。葉の形は、どこかシュウメイギクに似ていると思いました。ヒュッテ下の花壇には、いろんな山野草が植えられていますが、シカの食害から守るため、しっかり柵でガードされていました。今日は、ガスで眼下を見ることができませんでしたが、視界のよい日は瀬戸内海も見える、とのことでした。このあと、ヒュッテの中へ案内していただき、松たか子などの俳優陣と一緒に納まった幸せそうな写真を見せていただきました。冷たい水をいただいて休憩したあと、綱男さんと別れ、ヒュッテ横の登山道から、頂上に向かいました。
少し歩くと木道が整備され、そこには多くの登山者の姿がありました。取りあえず、左手の1955mの頂上まで行ってみることにしました。頂上では、記念写真を撮る人、あたりの木道で座り込み休憩をする人など様々です。私も木道の隅で、おにぎりでもと思いましたが、なんと車のトランクに忘れてきたようです。「あ~、残念。」と後悔するのも後の祭りです。さすがに高山らしくガスがあっという間に山肌を覆い、そして消えていきます。それにしても何と気持ちのよい、さわやかなことか。山のぼりの楽しみも少しはわかった気がしました。なんだかクセになりそうです。このあと、反対側の広い木道の見晴らし台でしばらく眺望を楽しみ、下山することにしました。
帰りは行きとは違う道をと思っていましたが、うっかり来た道に出てしまいました。下から息を切らした、登山者が何人もあがってきます。団体も多くて「こんにちは!」とあいさつするのも大変です。15人ぐらいのグループが続けて2組も上がってきたときは大変でした。団体に混じって、徳島県警の方もおられ、何事かと思ったら、中の一人が「巡回ですって」と教えてくれました。おまわりさんも大変です。下りは、膝に重心がかかり思った以上に負担が大きいことが、身をもってわかりました。リフトで見ノ越駅まで降りた後、来たルートを帰り、剣山木綿麻(ゆうま)温泉で汗を流し、しばし休憩。さっぱりしたあと、二層うだつで有名な、貞光の町並みを散策。最後に、道の駅「貞光ゆうゆう館」のレストランで遅い昼食をいただいたあと、帰路につきました。素敵な出会いもあり、心身ともにリフレッシュ、とても充実した一日となりました。(おわり)
若い男性のグループ 位置を確認しているのでしょうか。