小学生と時は、おとなしいだけで「積極性に欠ける」と常に通知表に書かれていた子どもだったけれど、小学校の高学年になって、自己改造に取り組むことになる事件が続いた。一つは3月3日のブログに書いた「ストライキ事件」であり、もう一つは祖母の葬儀だった。
私の家は材木業であったが、長男の父は家業を継がずに教員となった。だから祖父は父を嫌っていた。祖父は父の弟に跡継ぎをされるつもりでいたが、先の大戦で戦死してしまった。そこで人の良い兄が継ぐことになった。大学受験に失敗し浪人中だった兄とともに、私たちも材木屋に引っ越した。兄は祖父母のいる母屋に、私たちは奥の倉庫を改造したところに住んだ。電気と便所はあったけれど、水はなく、食事と風呂は母屋でいただいた。
母は、寝起きしていた倉庫の一角を教室にして、裁縫を教えていた。昼間も夜間もたくさんの若い娘さんが通ってきていた。母と祖父母はあまり口を利かなかった。祖母はきれいな人だった。よく映画に連れて行ってくれた。午後3時には、職人さんたちにおやつを出すので、私と妹も一緒にいただいた。私はおばあちゃん子ではなかったし、祖母も格別にかわいがってくれたわけではなかった。9月15日を「敬老の日」と意識できるようになった時、町で一番おいしいと言われていたお菓子屋まで行って、名物の最中を買って祖父母に差し上げたことがある。
祖母が亡くなった時、別に哀しいという気持ちなかった。葬儀は自宅で行われた。葬式を仕切るのは隣組の人たちである。台所では近所のおばさんたちが集まって食事の用意をした。買い物は全て通帳で行われていた。ここはまるでお祭りのようににぎやかだった。祖母が亡くなったというのに、涙を流す者はなく、時には笑い声さえするほど活き活きとしていた。どうしてなのか、人が死んだのになぜお祭りのようにウキウキしているのか。おかしい。日本人はおかしい。日本の宗教はおかしい。私は祖母の死よりも、葬儀がこんな風に行われることが無性に腹立たしかった。
私は、戦争で負けたのも、日本人が死を厳粛に受け止められないのも、根は同じだと思った。これは日本人の島国根性のせいだ。自分はこういう日本人にはなってはいけないと決意した。日本人の小説は読まない。父が「中国の偉い人は、敵を知らなくては戦には勝てない」と言っていたので、西洋の小説を読もうと思った。学校の図書室で見つけたストウ夫人の『アンクル・トムの小屋』を読んでビックリした。日本人とは全く違う生き方をしている。トムの心の支えとなっている『聖書』をぜひ読みたいと思った。このことを読書感想文に書いたところ、コンクールで入賞した。それがさらにキリスト教への関心を高めた。
大人になる決意のための心の準備は整った。
私の家は材木業であったが、長男の父は家業を継がずに教員となった。だから祖父は父を嫌っていた。祖父は父の弟に跡継ぎをされるつもりでいたが、先の大戦で戦死してしまった。そこで人の良い兄が継ぐことになった。大学受験に失敗し浪人中だった兄とともに、私たちも材木屋に引っ越した。兄は祖父母のいる母屋に、私たちは奥の倉庫を改造したところに住んだ。電気と便所はあったけれど、水はなく、食事と風呂は母屋でいただいた。
母は、寝起きしていた倉庫の一角を教室にして、裁縫を教えていた。昼間も夜間もたくさんの若い娘さんが通ってきていた。母と祖父母はあまり口を利かなかった。祖母はきれいな人だった。よく映画に連れて行ってくれた。午後3時には、職人さんたちにおやつを出すので、私と妹も一緒にいただいた。私はおばあちゃん子ではなかったし、祖母も格別にかわいがってくれたわけではなかった。9月15日を「敬老の日」と意識できるようになった時、町で一番おいしいと言われていたお菓子屋まで行って、名物の最中を買って祖父母に差し上げたことがある。
祖母が亡くなった時、別に哀しいという気持ちなかった。葬儀は自宅で行われた。葬式を仕切るのは隣組の人たちである。台所では近所のおばさんたちが集まって食事の用意をした。買い物は全て通帳で行われていた。ここはまるでお祭りのようににぎやかだった。祖母が亡くなったというのに、涙を流す者はなく、時には笑い声さえするほど活き活きとしていた。どうしてなのか、人が死んだのになぜお祭りのようにウキウキしているのか。おかしい。日本人はおかしい。日本の宗教はおかしい。私は祖母の死よりも、葬儀がこんな風に行われることが無性に腹立たしかった。
私は、戦争で負けたのも、日本人が死を厳粛に受け止められないのも、根は同じだと思った。これは日本人の島国根性のせいだ。自分はこういう日本人にはなってはいけないと決意した。日本人の小説は読まない。父が「中国の偉い人は、敵を知らなくては戦には勝てない」と言っていたので、西洋の小説を読もうと思った。学校の図書室で見つけたストウ夫人の『アンクル・トムの小屋』を読んでビックリした。日本人とは全く違う生き方をしている。トムの心の支えとなっている『聖書』をぜひ読みたいと思った。このことを読書感想文に書いたところ、コンクールで入賞した。それがさらにキリスト教への関心を高めた。
大人になる決意のための心の準備は整った。