広告最大手の電通の女性社員が自殺した。東京労働局は昨日、東京本社を立ち入り調査した。関西など3支社にも調査が入る異例の事態となったのは、長時間労働が常態化している疑いがあるためだ。広告に関連する仕事をしている者には憧れの会社だが、実態は厳しいものがあるようだ。私の知り合いも元電通社員なので、この話を聞いてみたいと思う。
私たちが就職した昭和40年代は右肩上がりの景気だったから、電通は仕事が山のようにあったはずだ。適当な仕事であっても回さなければならない時代でもあった。しかし、今は売るものがないから企画立案はとても厳しいだろう。新米の彼女が「休日返上で作った資料をボロクソに言われた。もう体も心もズタズタ」と感じるのも無理はない。
それにしても彼女の上司は心遣いに欠けている。どこをどう工夫するといいと指導するのが上司の務めなのに、「君の残業時間の20時間は会社にとって無駄」と言う神経にビックリする。カミさんが言うように「さっさと辞めてしまえばよかったのよ」ということだろうが、何とか頑張らなくてはと真面目に考える女性だったのだ。
私は大学4年の時、東京の出版社で働いたが、編集会議の席で、私がもらってきた成果を上司は自分がとってきたかのようなに言った。今思えば、自分たちのグループの功績という意味で言ったのかも知れなかったが、その時はこんな上司の下では働けないと思い、会社を紹介してくれた大学の教授に「会社を辞めたい」と手紙を書いた。
彼女の自殺について、どこかの大学の教授が「月当たり残業時間が100時間を超えたくらいで過労死するのは情けない。会社の業務をこなすというより、自分が請け負った仕事をプロとして完遂するという強い意識があれば、残業時間など関係ない、云々」と述べていたが、猛烈社員が頑張れた時代とは違うし、問題はこういう悲劇を起こさないために何が必要かということである。