名古屋市美術館で12月3日まで開催されている『ランス美術館展』の、ランスはフランスの都市の名前で、ここには画家のフジタ・ツグジ氏が建てた教会もあるが、実際にどこにあるのか気にしていなかった。フランス北東部のシャンパーニュ地方の都市と聞いて、「えっ、あのシャンパンの?」と地図で調べてみる気になった。
フランスにはイタリア旅行のために経由したドゴール空港に降りたことがあるくらいで、一度も街を歩いたことが無い。私の旅行は、有名な観光地巡りよりも、その街の隅々をさ迷い歩く方が好きなのだが、残念ながら英語が苦手な私は個人旅行ができない。私の海外旅行は、友だちが誘ってくれたイタリアと韓国とアメリカ、それに誕生日会の人たちと行ったアメリカのバスツアー、次女が結婚式を挙げたシンガポールと住まいがあったバンコク、団体旅行で出かけたスペインくらいしかない。
イタリアには2度出かけた。フランスはぜひ出かけてみたいと思ったが実現できず、もう海外に出かけるほどの元気はない。フランスは日本人が好きな国なのだろう。芸術の国というイメージを持つのは、パリで活躍した画家たちが大勢いるからだろう。行ったこともないのに、モンマルトルの丘でたくさんの画家たちが絵を描いている姿まで目に浮かんでくるし、映画で見たムーラン・ルージュのストリップショーはきっと華やかなのだろうと想像してしまう。
多くの人は絵画を通してフランスに親しみを感じるのかも知れないが、私はもう一つ、映画が印象深い。ヌーベルバークと言われた若い監督たちは、映画の在り方を変えたと思う。ジャンヌ・モローにしてもブリジッド・バルドーにしても、肉体が美しいだけでなく、目の動きや顔の表情が私には衝撃的だった。ストーリーも既成の価値観に逆らう、新しい時代を予感させるものだった。
シャンパーニュ地方はブドウ園が続いているのだろうか。今晩はシャンパンを飲みながら、フランスに思いを馳せ、現実はテレビで日本シリーズの第4戦を見ることになるのだろう。私の脳は確実に老化しているようだ。