友々素敵

人はなぜ生きるのか。それは生きているから。生きていることは素敵なことなのです。

やっぱり寂しがっている

2017年11月12日 17時56分21秒 | Weblog

  「死にたい」と若い人がスマホで呟いているという。人は誰かとつながっていたい願望を持っているが、「死」まで共有したいのは若さのせいなのだろうか。私たちのような高齢者になると、これ以上恥を晒して生きていたくない、いっそのこと消えてしまいたいと思う。私はそれが高齢者の一般的な意識だと思っていたが、周りで聞けば誰もが「長生きしたい」と言う。

 ノーベル賞作家のイシグロ・カズオ氏の『夜想曲集』を読んでいて、たとえおせっかいと思われても、仲間の集いに出席できないと伝えてきた家に出かけようと思い、訪ねてみた。人生が何度もあるのなら、「そうか」と見過ごしてもいい。夫婦ともによく知っているのに、放っておくのは私の性分に合わない。「死」はいずれ確実にそして平等にやって来る。慌てる必要は全くない。神様の計画に任せる他ない。

 肝心なことは、そこに至るまでに「私」が何をしたかであろう。『夜想曲集』は5つの短編を集めたものだ。物語が短いので一気に読めると思ったが、それは私の思い込みだった。短いからではなく、筆の運びかよく分からないが、どんどん読ませてくれる。5編とも音楽家の話で、しかもいずれも男女の思いが巧みにすれ違っている。若い男女ならいくらでもそういうことはあるだろう。けれど、登場人物が中高年であるところが面白い。

 若い時はあんなにも「好きだ」「愛している」と結婚したのに、長い年月をともに暮らしてきて、互いを理解するよりも、受け入れていないことに焦り反発する。しかしまあ、この小説を読むと、どこもそんなものかと悟ることも出来る。求め過ぎれば腹も立つが、自分もまた相手の思いを汲み取れない出来損ないかと思えば、お互い様だ。連れ合いの話に耳を傾け、同意が出来なくても堪えることも大事な術だろう。

 若い人たちのようにスマホが出来ない私がつながっている人は少ないが、会えば楽しい人たちだ。オーイ!誰かコメントしてくれ!やっぱり寂しがってるよ。

コメント
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