雨がシトシトと降る「子どもの日」。「子どもの日」は五月晴れが似合うのにと、何となく気持ちが沈む。私は三男なので、長男である兄貴のような飾り物の兜はなかった。それが当たり前だと思っていたので、寂しいという気持ちもなかった。
端午の節句は、祖母がせいろで作るちまきや木型の餅を食べる日くらいしか思い出せない。兄貴に子どもが出来て、庭にコイノボリが高々と飾られたが、それはやはり兄貴の長男のもので、私に縁は無かった。
我が家の子どもはふたりとも女の子だったから、「子どもの日」はゴールデンウィークの最後の日でしかなかった。子どもたちを車に乗せて、富士山麓へ出かけていた。富士山を見たら感激するだろうと思い、朝霧高原や富士五湖、三保の松原などへ何度も行った。
長女が、「どうして富士山ばっかりなの?」と不満を口にした時、私の勝手な思い込みだったことに気が付いた。それからは信州へ出かけることが多くなった。友だちが貸してくれたワンボックスカーで、カミさんの両親も誘って、霧ケ峰高原や軽井沢を経由して草津温泉へも行った。
家族を乗せて車で旅行する、典型的なニューファミリーである。私は高校生の時に両親を亡くしていたので、カミさんの両親と旅行することに憧れがあった。娘を嫁にやったのに、内ゲバに遇い教師を辞めてしまったことへのお詫びの気持ちが働いていたのかも知れない。
今年はじっと家に籠って、何にか分からないが耐えているゴールデンウィークだった。