介護施設に入所している先輩から、「バナナとアイスクリームとヨーグルトを差し入れして欲しい」と電話があった。先輩は確か90歳になるはずだ。カミさんと長男の3人で暮らしていたが、カミさんはガンで名古屋の通院施設に通っている。送り迎えをしているのは次男のヨメで、先輩のところへ顔を出すのもこの人である。
長男は会社の社長と言うから、金はあるのだろうが結婚もせず、家族のことにも無関心に徹しているようだ。従って、先輩の家の細かなことは全て次男のヨメが負っているらしい。施設に顔を出した時に、「バナナが食べたい」と頼んだが、「ヨメは『みんな我慢して暮らしているのに、お父さんは我儘だ』と言う」と嘆く。
ヨメにしてみれば、家のこと夫のこと子どものこと、それに義父と義母の世話をし、「ありがとう」の言葉も無く、腹が立って仕方ないのだろう。先輩も気付かない訳ではないが、どうしても自分のことしか考えられない。今から思うと次男のヨメに、「ありがとうな」と言って、市に寄付したいと思っていた百万円を渡しておくべきだった。
先輩は議員までした人なので、応援してくれたご近所の皆さんへの恩返しのつもりで、「市に寄付する」と言ったのだろう。次男のヨメが、「そんなお金がどこにあるの」と激怒したのも無理のないことだ。先輩は「自分と母ちゃんで稼いだ金。母ちゃんはいいと言ってる」と、まだ納得できないようだが、半分は諦めている様子だった。
今日の先輩は胸と膝にコルセットを巻き、難聴はさらに進んでいた。「頭がボケている」と言うが、なんとか会話は出来るし、判断できないことも無いが、どうしても自分のことが先行してしまう。「歳を取ればみんな同じ、気にすることはないよ」と励ます。面会は3分までと決められているそうだが、職員も「時間ですよ」とは言って来なかった。
先輩が時間を気にしていたので、私が立ち上げって職員に手を振った。「ちょっと我儘かも知れませんが、よろしくお願いします」と挨拶すると、「いいえ、そんなことありません。とても優しい方です」と言ってくれた。「じゃー、また来るから、いつでも電話して」と言って別れた。
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