人間は産業革命とフランス革命の後、急激な発展を遂げた。そして今、人口減少や食糧の自給率、温暖化など様々な新しい課題に直面している。ゴリラの研究家・山極寿一先生の講演は、霊長類の研究から人類をどう分析しているのか興味深かった。
人類は700万年前、チンパンジーとの共通祖先から分かれて、独自の進化を遂げた。それまで暮らしていた森を捨て、直立2足歩行によってあらゆる場所に進出した。直立2足歩行により、人間の脳は大きく変化した。
生まれたばかりの人間の子は長い間、母乳で育てられ、すぐには自立せずに幼児期があり、周りを見て真似しながら学んでいく。脳は1歳で生まれた時の2倍となり、5歳で大人の脳の90%に、12から16歳で100%となる。
山極先生は「学ぶとは真似すること」と言う。真似することで共感能力が育ち、他人に憧れたり、他人を目標とする。人間は顔と顔を向き合わせるが、サルは決して向き合わない。けれど、ゴリラは人間に近いそうだ。
弱い生き物として出発した人類は、共同することで乗り越えてきた。家族という共同体こそが進化の源だった。集団生活は家族だけにとどまらず、どこの誰たちとも暮らす能力、そこに言葉が生まれ、いっそうの団結が生まれた。
しかし、この安住と所有は争いの源でもある。戦争は常に、安住と所有の奪い合いである。中央集権化によって、争いに終止符が打たれるように見えつつ、地方分散化のうねりも生まれてきている。
人は単なる人間社会を維持するための家畜なのか、地方分散化は人の個性を取り戻すことが出来るのか、微妙な時点にある。AIは人類に幸せをもたらすのか、いや、均一化あるいは統一へと進む気がしてならない。
日本人の美意識は「あいまいさ」であった。AIが「あいまいさ」の美しさが理解できるのだろうか。山極先生は「市場価値」から「使用価値」が求められる時代となると予見する。私は大きく頷いて講演を聴いた。
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