【215ページ】
(佐藤)年収1000万円というと聞こえはいいが、1000万円ちょっとのホワイトカラーエグゼンプション対象者になったところで、少しもバラ色とはいえない。45歳ぐらいで子どもが2人いるモデルで、ボーナス4ヶ月として月の手取りを知人の税理士に計算してもらったところ、月46万円という数字だった。それで山手線内の都心にマンションを買って、車も買って、子供2人を私立の学校にやることができるだろうか。正直、絶対に無理だろう。
つまり、土日も休みなしに身を粉にして「死ぬまで働け」というような状況の中で、年俸制の専門職についたところで月46万円が天井なのである。
それだったら、年収400~500万円でも超過勤務が2時間位で土日もきっちり休め、埼玉や千葉などの新興住宅地に住んで、子どもは近所の公立の学校に通わせる生活とどっちがいいかというと、後者を選ぶ人が多いのではないだろうか。
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(竹中)私がすごく重要だと思ったのは、これまで触れてきた「多様性」もそうですが、非常に大胆な、歴史を踏まえた「バーズ・ビュー(鳥の目)」を持つこと、「戦略は細部に宿る」という、極めて具体的なポイントを同時に見ていくということの2つです。
法律のちょっとした条文を変えるだけで、ものすごく大きな変化が起こるということがありえます。そのためには法律や制度を熟知していなければいけないし、そこに「鳥の目」を通して歴史や世界の例から見た大きな発想と組み合わせることによって、初めて戦略ができるわけです。やはりこの両方ができなければいけないと思います。
大きな議論だけする人、あるいは小さな議論だけする人、それでは実際に役に立つ政策というのは出てきません。
(ken)年収の見た目と実際について、215ページの事例は佐藤氏が他の著作でも、たびたび紹介されています。私自身、定年退職をしてからですが、年収と税金、年収と年金の関連、さらには住宅の売却と購入などを通じて、「何が幸せなのか?」「お金は大事だけど、それだけじゃないな!」と痛切に考えさせられました。また、竹中さんの「鳥の目」および「戦略は細部に宿る」という視点は、「木を見て森を見ず」にたとえれば「木と森を見て、さらに森を空から見る」ことだと理解しました。(つづく)