前福井県議会議員 さとう正雄 福井県政に喝!

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地方創生は本気か、まやかしか

2016年01月05日 | Weblog
  沖縄に象徴されているように、安倍政権は地方自治を蹂躪している。原発でも稼働したところには財政を手厚くする動き。先の県議会でも問題にしたが、人勧実施さえ、国より先にやるな、と指令をだしている。

こんな姿勢での地方創生が本当の地方主権にはつながらないことは明らかではないか。
新聞記事を読んでいっそうその思いをつよくした。


■西日本新聞  
  地方自治の危機 抜け出そう「上下・主従」
2016年01月04日 10時35分



地方自治法の施行から今年で69年になる。衆参両院の地方分権決議から23年、地方分権一括法施行からでも16年の歴史を刻む。

 九州に基盤を置く新聞社として、とりわけ大切に考えてきた地方自治や分権改革は本当に定着し、発展しているのだろうか。そんな疑問や懸念を抱かせる問題が起きていることが心配でならない。

 沖縄の米軍普天間飛行場の移設問題と東日本大震災からの復興を切り口に考えてみたい。沖縄と東北の地域に限定された課題ではない。九州をはじめ、あらゆる地域が共通に突きつけられる自治と分権の危機が顕在化している。

 ▼戦後の民主化で実現

 昨年11月、大津市であった日本自治学会の研究会で、共通論題のシンポジウムとして「戦後70年と地方自治」というテーマが取り上げられた。

 地方自治は、戦後民主化の一環として実現した。日本国憲法第8章に地方自治が明文化され、地方自治法は1947年5月3日に憲法とともに施行された。

 それ以前の大日本帝国憲法に地方自治の規定はなかった。府県や市町村は存在したが、国の出先機関という色彩が強かった。府県知事は国が任命する官選だった。

 まさに地方自治は戦後とともに歩みを進めてきた。70年近い歴史の中で、画期的前進の転機になったのが地方分権改革である。

 一括法の柱は、自治体を国の下請け機関とみなして国の仕事でありながら自治体に押し付けていた機関委任事務の全廃だった。国と自治体の関係は「上下・主従」から「対等・協力」に改められた。

 戦後復興や高度成長など一つの共通する目標へ突き進むときは中央集権的な行政も一定の役割を果たしたが、それでは住民や地域の多様化に対応できない。

 ▼沖縄と被災地からの報告

 その後は停滞気味といわれる地方分権だが、法令で自治体の仕事を細かく縛る「義務付け・枠付け」の見直しは民主、自民両政権を通じ地道に続く。そうした連綿とした流れに逆行する二つの光景が自治学会の研究会で報告された。

 琉球大の島袋純教授(地方自治)は、沖縄本島面積の18%を米軍基地が占める現状について「地域形成の障害。地域の土地をどう保全、活用するかの権限は自治体にあるべきだが、国は沖縄の自己決定権を認めない」と述べた。

 沖縄県では普天間飛行場の名護市辺野古移設をめぐり、県内移設を拒む翁長雄志(おながたけし)知事が前知事の埋め立て承認を取り消したのは違法だとして、国が知事に代わって取り消し処分を撤回する代執行を認めるよう裁判を起こした。

 訴訟の第1回口頭弁論で翁長知事は「日本に本当に地方自治や民主主義は存在するのでしょうか」と問題提起した。

 東北の被災地はどうか。ひょうご震災記念21世紀研究機構副理事長の室崎益輝(よしてる)・神戸大名誉教授(防災計画)は「市町村に必要な予算と権限がない。国の復興予算は見かけは多いが、縦割り配分なので被災地が使いたい分野に使えない。自治体は住民ではなく国の顔色をうかがっている。自治機能が崩壊しつつある」と指摘した。

 自治を軽視して分権に抵抗しがちな国の姿勢、国に頼る傾向が根強い地方自治体…。沖縄や東北の被災地でなくても考えさせられる全国共通の問題ではないか。

 ▼地方創生は救世主か

 地方創生を掲げる政府は、2016年度当初予算案に新型交付金1千億円を計上した。

 自治体が本年度中に策定する地方版総合戦略の出来に応じて交付額は決まる。交付されない自治体もあり得るという。

 賞金付きのコンテストに例えれば、スポンサーと審査員は国で応募者は自治体である。国のお眼鏡にかなうようにと思えば、戦略は総花的で似たり寄ったりの内容になりがちだ。地方が主役であるはずの地方創生にしても、国と自治体は「上下・主従」の関係から抜け出せないのだろうか。

 だとすると地方創生を救世主と考えるのは甘い。地方が本当に実現したいと思えば国に依存してはいけない。必要な権限と自由に使える財源を国から自治体に移すしかない。自治の危機ともいえる事態に陥っている東北の被災地と沖縄を人ごとと考えてはいけない。


=2016/01/04付 西日本新聞朝刊=