18日はアジア時間の午前に伝わった内容そのままに、オバマケア代替案は採択断念ということになった。オバマケアの廃案を含む修正は、トランプ公約の目玉ともいえるもので、それが採決もかけられない状況は、“決められない政治”の象徴といえるもの。マコネル共和党院内総務は、来週にでも今度は「廃案」を掲げ採決を試みようとしていると伝えられているが、これも難しいと見られる。共和党穏健派が、黙ってはいまし。
そもそも、この修正案を成立させることで政府支出を削り、浮いた財源をもとに減税などを推し進めようとの予定だけに、改めてトランプ政権の政策遂行能力に疑問符がつき、債券買い、金利低下、ドル安そして金高につながった。それでも下げないNY株式だが、折しも決算発表の時期でもあり、株式市場の関心はそちらに移っていることが、“救い”ということか。
昨日取り上げたように、NY金先物市場ではファンドが大きなショート(売り建て)を抱えており、すでに思惑外れの上昇となっていることから、心理的な節目となる1250ドル突破の有無が、価格展開上の注目点になったといえる。
さて問題のショートの規模だが、2015年8月11日の483トン以来の数字となる。手元の資料で最高値は2015年7月21日で496トン。ちょうど9月のFOMCにて金融危機以降初の利上げが行われるのではと、いよいよFRBの政策転換が迫り、ゼロ金利脱出観測から利上げが加速するとの見方から、売り込まれたのが背景だった。ちなみに当時の価格は、1103.50ドルだった。結果的には、2015年9月の利上げは、金融市場のリスクオフを受け見送りになった。
足元のショートの急増の背景を時系列で追うと、6月27日にポルトガルで開かれたECBの年次総会に際してECB、BOE(イングランド銀行)、BOC(カナダ中銀)の総裁が、それぞれ利上げを含む引き締め方向への政策転換を示唆し、まず欧州の長期金利が上昇。それが米国金利に飛び火し米長期金利も上昇したのを受け、ファンドがロングの見切り売りに加え、ショートの積み増しに向かったと見られる。さらに7月7日の米雇用統計で就業者増加数の上振れを受け、売りを膨らませた結果、過去最高レベルの490トンまで膨らんだものと見られる。
そのタイミングで出てきたのが、皮肉にも金の買い材料といえるもの。トランプJrによるNYのトランプタワーでのロシア人弁護士との面会の話(7月10日)に、冴えないCPI、小売売上高(7月14日)、オバマケア代替法案採決断念(7月17日)という一連のニュースというわけだ。溜まったショートが、買戻しを余儀なくされるのか否か。内部要因からは、NY金には上向き圧力が掛っているといえる。今週はまず明日20日のECB理事会の結果が材料となりそうだ。
まだにして欲しいです。
必ずしも急騰、急伸を意味するとは、限りません。