10月11日のNY金は4営業日続伸となった。
中東情勢の緊迫化を受けて相対的に安全な資産とされる米国債に買いが入り利回りは低下、金市場は買い優勢の流れとなった。同時に安全資産としての金の側面もありロンドン時間にプラス圏に浮上した相場は、NY早朝から終盤に向けて水準を切り上げながら進行。NY午前に1880ドル台半ばでもみ合いになった後、午後に入り買いが先行し一時1890.90ドルまで買われた。終盤に向けても切り上げた水準を維持して終了した。NYコメックスの通常取引は、前日比12.00ドル高の1887,30ドルで終了した。
明けて12日アジア時間からロンドン早朝に当たる日本時間16時過ぎまでの時点では、静かな展開の中に徐々に水準を切り上げながら相場は進展している。ここまで1895.50ドルまで買われている。
緊迫化した中東情勢は、イスラエルがイスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザへの地上侵攻に向け10万人規模の部隊を配置。地下トンネル網を駆使して活動するハマスを空爆だけでは打撃を与えきれないとして、犠牲者数拡大の可能性が高いものの地上戦に持ち込む計画とされる。戦闘が激化し、地政学リスクが一段と高まるとの警戒感が米国債の買いを誘った。さらにここに来て米連邦準備理事会(FRB)高官による追加利上げに慎重なハト派発言が続いていることも、買いを促している。
指標となる10年債利回りは、朝方に発表された9月の米生産者物価指数(PPI)が前年比2.2%上昇と、市場予想を上回ったことを受け、やや方向感を失ったものの午後に入り一時2週間ぶりの低水準となる4.543%まで低下。終値では4.564%となった。3営業日連続の低下で、この間24bp(ベーシスポイント、0.24%)と下げ幅も大きくなっている。
長期金利の低下を受け主要通貨に対するドル指数(DXY)は、やはり午後に一時2週間ぶりの安値となる105.559を付け、終値は前日とほぼ変わらずの105.820で終了した。米金利上昇もドル高も一巡という環境が生まれている。
午後に入り9月開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が公開された。堅調な経済を受け、追加利上げの可能性が高いとの意見が多数を占める中でも、議論は利上げの必要性よりも「制約的」な政策をいつまで続けるかに焦点が移っていた。また労働組合によるストライキや不安定な原油価格などからメンバーの大半が経済の先行きは依然として非常に不透明と判断していることが判明した。
11日は、ウォラーFRB理事が、一連の市場金利の上昇がインフレ鎮静化につながる可能性があるため、FRBは金利の動向を見守る姿勢だと述べている。金融情勢の引き締まりが「われわれのために仕事の一部」を担う態勢が整っているとも指摘しており、市場では追加利上げ観測が急速に後退している。
ここまでNY金の上値を抑えてきた米金利とドル高は後退する中、地政学要因に反応しやすくなっている。