10日のNY金は、総じて1870ドル台半ばを横ばいで推移。この水準自体は前日の時間外取引で付けていたもので、地政学リスクを囃す割には上値の重い展開と言えた。NYコメックスの通常取引は前日比11.00ドル高の1875.30ドルで終了した。中東情勢の行方を慎重に見守っているということか。
イスラエルは10日、パレスチナ自治区ガザに過去最大規模の空爆を行い、ガザ地区との境界を掌握したと発表した。さらに地上侵攻に踏み切る可能性を示唆している。10日時点で双方の死者は2000人を超えたと伝えられており、大規模な地上戦に発展すれば兵士や市民などの犠牲がさらに拡大するのは必至とされる。米国はハマスによるテロ攻撃と捉え、対抗するためには報復的な攻撃も容認するスタンスをとっていて、時間の経過とともに本格的な戦争状態に入るとみられる。一部メディアではイランの関与が指摘されたが、10日イランは再度これを否定。
前日はコロンバス・デーで休場となっていた米債券市場が10日取引を再開、やはり安全資産として米国債買いも入り、価格は上昇し利回りは急低下した。米連邦準備理事会(FRB)のジェファーソン副議長やダラス連銀のローガン総裁が、このところの米長期金利の急上昇自体が、景気抑制的との捉え方から、追加利上げに慎重な見方を示したことも米国債相場の買いにつながった。10日はアトランタ連銀のボスティック総裁が政策金利をこれ以上引き上げる必要はないとして、金融政策はインフレ率を2%の目標に戻す上で十分に景気抑制的だとの見解をあらためて示した。景気見通しが予想外に変化した場合は利上げが必要になるかもしれないが、それは現時点で自身が予想するものではないとしている。
一方で、「インフレ率を目標の2%に戻すことを決意している」(10日ウォラーFRB理事)、インフレ率を下げるために強力な手段を講じてきたし、その目的を達成するために仕事を続けるという意見もある。
ただし、印象としてはこのところの金利急騰がFRBによる追加利上げに代替するものとの捉え方がFRB高官の間でも広がっているとみられる。
追加利上げ観測の後退も、10日の長期金利の低下につながったとみられる。この日の10年債はNY時間外の取引開始こそ4.804%となお高水準を維持したものの、時間の経過ともに低下し、NY時間午後には一時4.617%と1週間ぶりの低水準となり4.664%で終了。7月中旬以降で最大の低下幅を記録した。4.974%で終了した2年債利回りの低下幅も、8月下旬以降で最大となった。
地政学リスクということでは、本日、米下院にて次期議長の選出が行われる予定になっている。
与党共和党内で誰にすべきか意見が分かれたままとなっている。規定上、過半数を獲得する候補が出るまで投票が繰り返されることになる。バイデン大統領は10日の演説でイスラエルへの軍事的支援を表明したが、新議長選出まで決議できない。
有事にあって即応できない米国議会というのもリスク要因といえる。暫定予算で目先を交わした状態の新年度予算協議も1カ月後に期限が控えており、格付け会社ムーディーズによる米国債格付け見直し(格下げ)も早晩俎上に上りそうだ。