亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

FRBウォラー発言⇒2050ドル突破=ファンドの買い残(ロング)急増

2023年11月29日 15時45分57秒 | 金市場

11月28日のNY市場の金価格は3営業日続伸した。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ打ち止め観測を後押しする、FRB高官の発言を手掛かりにした買い優勢の流れに今年5月上旬以来、約6カ月半ぶりの高値に水準を切り上げた。

NYコメックスの通常取引は前日比27.60ドル高の2040.00ドルで終了した。NYコメックスにてこれから取引の中心となる2024年2月物は、2060.20ドルと2050ドル超の水準で取引を終えている。短期金利が5%を超える米国だが、金利分のプレミアムを乗せた価格が2060ドル台となっている。

取引時間中の過去最高値は、2020年8月の2089.20ドル、終値では同8月6日の2069.40ドルとなっている。高値更新が視野に入るが、相応の利益確定売りが出ているものと思われる。

 

思うにFRBの引き締め策が転換期を迎えた環境変化を読んだファンドの新規買いが、利益確定売りを消化しているものとみられる。いわゆる買い建て(ロング)の“回転が利いている”状況にあるとみられる。28日の価格展開はまさにこうした状況を表している。買い手掛かりとなっている材料が、後退するだけで短期的には反落もしやすい状況といえる。

 

28日はNY時間外のアジアからロンドンさらにNYの早朝にかけて金市場は2010ドル台半ばで横ばいで推移した。まさに売り買い交錯状態と見られたが、均衡が破られたのはNYの通常取引が始まって以降だった。買い先行に転じ2020ドル台半ばに10ドルほど水準を切り上げてもみ合いに。そこに伝わったのがウォラーFRB理事による利下げ観測を含む発言だった。まとまった買いに上昇は加速し、お昼前には2040ドル台に乗せ、そのまま切り上げた水準を維持して取引は終了した。

 

ウォラーFRB理事は28日午前10時に始まった講演で、米金融政策が米景気減速やインフレ率を2%の目標に回帰させるのに適切な状態であることへの「確信を深めつつある」との見解を示した。これまで引き締めに積極的なタカ派と見られてきた同理事の発言だけに市場へのインパクトは大きかった。

ウォラー理事はさらに、その後参加した討議で「(政策金利の適切な水準を定式化した)テイラー・ルールにおいては、ディスインフレの基調(物価が上がりにくい環境)がさらに数カ月続き、インフレが大幅に低下していると確信できた時には利下げを始められる」とも述べた。利下げ観測を含む発言は、まさに市場の想定外であり、それゆえ反応も大きくなった。

 

発言を受け米長期金利の指標となる10年債利回りは一時4.324%と9月20日以来の低水準を付け、そのまま4.324%で終了。価格としては高値引けということに。一方、ドル指数は一時102.610まで下落し、8月10日以来の安値を付けた。

ファンドが組んでいる売買プログラム(アルゴリズム)は、そのままゴールドは買いという判断になったとみられる。 その結果、NYコメックスでは買い建て(ロング)がさらに拡大していると見て間違いないだろう。

直近11月21日時点で、CTAなど短期筋の持ち分はネットで重量換算357トンと7月25日以来の規模まで膨らんでいる。今年の最大値は5月9日の456トンとなっている。先に書いたが回転が利いているうちは上値追いとなるものの、状況により反落の可能性も高まっている。

目先は資金流入の持続と規模がポイントに。

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