貴金属の需給統計で定評のあるトムソン・ロイター・GFMS社が、2016年4-6月期の金の需給統計を発表した。ETF(上場投信)を中心にした欧米投資マネーの大量流入の一方で、中国・インドを中心とする実需の落ち込みが目立ち、需給バランスとしては相殺という構図となっている。
ETFの増減の経過に関しては、調査を待たなくとも日々残高が公表されており十分把握できる。見えないのは、アジアを中心とする実需の方だ。今回の発表データの(すべては読み切れていないが)概略を見て持った印象は、予想以上に実需が落ちているということ。
ETFは4-6月期に232トンとなり、前年同期比では比較は出来ず。というのも32トンの売り越し(減少)だった。売り越しから大幅買い越しに180℃針が振れた。第一四半期の336トンと合わせて今年上半期つまり半年間で568トンとなっていた。上半期としては過去最高の増加としている。
一方、宝飾需要は27%減の341トン。公的購入(各国中銀の買い)も42トンと前年同期の81トンからは49%減。地金や金貨の現物投資は3%の減少。金貨の伸びが減少を抑えている。欧米の投資需要が中心を占めるETFや先物投資に関連するもの以外は総じて減少している。
細目では、中国の宝飾需要は前年同期比24%減の83トン、インドは同56%減の69トンとなった。いずれも前年の四半期平均は中国が141トン、インドが168トンとなっていた。インドはロンドン価格に対して現地価格がディスカウント状態になるなど買い引き合いが弱まった。春先にあった宝飾店のストの影響が大きかったとみられる。
鉱山生産は2%減の770トン。スクラップは9%増の310トンとなった。
金融市場からの資金シフトがここまでの価格上昇の大きな背景であることは、いまさら言うまでもないが、それが数字の上で示されたということ。
さて明朝3時のFOMC声明文待ち。