亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

金1800ドル突破、懐疑の中で育つ金相場

2021年05月10日 22時21分01秒 | 金市場
久々の更新となった。理由があって不要不急でなく、必要で早い対応をせまられる用向きで帰省していた。その間NY市場のデータは向こうが開いている期間はチェックし、いつものルーティーンはこなしていた。さて、日本国内が連休中の5月第1週目の週末にかけてNY金は、心理的さらにテクニカル分析上も節目となる1800ドルを突破し、2月初旬以来3カ月ぶりの高値水準に値位置を切り上げた。

具体的に清算値(通常取引終値)で見ると、5月6日は前日比31.40ドル高の1815.70ドル、翌5月7日は同15.60ドル高の1831.30ドルとなった。この日は、発表された4月の米雇用統計が予想を大きく下回ったことで、米長期金利の低下とドル安を背景にNY金は騰勢を強め続伸となった。

4月の米雇用統計はサプライズとなった。要点だけ上げると次のようになる。非農業部門就業者数(NFP)は前月比26万6000人増だったが、市場予想は100万人増前後となっていた。3月の雇用者数は77万人増で、当初の91万6000人増から下方修正された。アトランタ地区連銀のボスティック総裁が前日のインタビューで、4月の雇用者数の伸びが100万人以上になる見通しを語っていたほどだった。それでもなお、量的緩和縮小の議論を開始するには足りないとして、米連邦準備制度理事会(FRB)の緩和策継続に対する強い意志を代弁していた。結果は、その見通しをも大きく覆すものになった。失業率も0.2ポイント低下を見込んだ市場予想に反して0.1ポイント上昇の6.1%となった。想定外の悪化というわけだ。

こうした結果を受けて注目すべきは、「時給20ドル(約2200円)を下回る職種は募集をかけてもなかなか埋まらないとの声が製造業から出ている」としたFRBの4月の地区連銀経済報告(ベージュブック)の一節だろう。ベージュブックは4月27―28日のFOMC(連邦公開市場委員会)に当たっての基礎資料を意味する。連邦政府による加算金による手厚い給付を手にした人々が低賃金の職に就くのを控える傾向が見て取れる。思うのは、イエレン財務長官の「Go Big(大きく行動しよう)」に象徴されるバイデン民主党政権の大きな政府指向の弊害の表れではないかということだ。感染リスクの高い仕事で、失業給付と比較して割に合わないとなると、職に就くのは見合わせた方がいいと考える人々が増えるのは、必要悪と言うべきか。民主党政権の「大きな政府」の弊害と思う。

さて、以前から(ポッドキャストなどで音声情報でも文字情報でも)1800ドル越でテクニカル要因の好転を指摘してきたが、期せずしてこのタイミングでそのような状況に至った。何も今回の雇用統計で水準を切り上げたわけでなく、その前から欧米勢の売りを拾うアジア実需の存在があり、ここにきて先行した中国に追い付き追い越す形で米国の正常化が加速したことで、米実質金利の再低下が始まったことが背景にある。既に1800ドル手前の100日移動平均線は5月6日のCTAの投機的攻撃により突破。残るは200日線は1860ドル台とややバーが高い。一般的には1850ドル手前にも売りが控えるが、それを雇用統計のサプライズの余勢を駆って越えられるか否か。

米長期金利の上昇は避けられる、ゆえに金は下げるという多数派の見通しを踏み越え、懐疑の中で相場は育っている。こうなると強気を唱える御仁が増えることになる。


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