1月9日のNY金価格は小幅に下落。3営業日続落となった。NYコメックスの通常取引は前日比0.50ドル安の2033.00ドルで終了した。
前日までの米連邦準備理事会(FRB)高官の発言を消化しつつ、11日(木)の米12月消費者物価指数(CPI)など週後半のインフレ指標の発表を控え、やや警戒モードが先行する流れが続いている。 というもの12月米CPIについては、前年同月比3.2%、前月比0.2%の上昇と11月の同3.1%、0.1%上昇からやや加速が予想されていることによる。
2050ドルに接近するとファンドとみられる売りに押し戻され上値の重い展開ながら、逆に下値は2030ドル近辺でサポートされ一定の底堅さを感じさせる流れとなっている。
下値の底堅さは中東情勢を巡り、イスラエルによる攻撃がレバノンに至るなど戦域が周辺国に広がる懸念が意識されていることによる。ブリンケン米国務長官が中東を歴訪し調整に乗り出しているものの、一時のように人質の解放への流れは消えている。むしろ拡大をどう防ぐかに注力している状況にある。
さらに中国からの買いが下値を支えているとの指摘もある。
今年は2月10日に始まる春節(旧正月)を前に、中国当局が銀行に金の輸入割当を与えた可能性が指摘されている。
この見方が正しければ、輸入する中国の銀行はスプレッド(値ざや)を確定するために上海市場で金を売り、ロンドンもしくはNY市場(コメックス)で金を買っているとみられる。
ただし、金購入は単純な消費とは別物ではあるが、中国国内で一般消費材の需要は落ちている。食品や飲料など一部有名ブランドも値引き販売に乗り出した(ブルームバーグ)と伝えられるほか、衣料品や化粧品でもそうした値引きによる販売促進策が取られている。経済のデフレ転落を防ぐために当局は緩和策を進めようとしている。
本日はFOMC(連邦公開市場委員会)の副議長でもあるNY連銀ウィリアムズ総裁の講演が予定されている。 今週はボウマンFRB理事が政策金利が現行水準(5.25~5.50%)に維持されれば、インフレ率は当局目標の2%に鈍化すると考えられるとし、物価上昇圧力が後退すれば利下げを支持する可能性を示唆した。ボウマン理事はインフレ退治にはあと1回の利上げが必要になるとするなど、タカ派的発言で知られてきた経緯がある。
このところのインフレ率が順調に2%方向に下がるならば、現行の金利水準は引き締め過ぎであり、したがって利下げが必要との見方が増えており、その考え方にくみしたということか。ただし、目標である2%への道筋が見えてきたものの「勝利宣言には時期尚早」(アトランタ連銀のボスティック総裁)というのがFRBのコンセンサスといえる。
ところで、昨日時間がなく更新できなかったが先週5日発表の12月の米雇用統計では非農業部門雇用者(NFP)が前月比21万6000人増と、伸びは市場予想の17万人を上回った。時間当たり平均賃金の伸びも前年同月比は4.1%上昇し、前月の4.0%から加速した。
市場ではFRBによる早期利上げ観測が後退したものの、10~11月のNFP増加分が合計7万1000人下方修正されるなど、時間の経過とともに詳細分析が進み労働市場の過熱感は薄れているとの評価が定着しつつある。
週明け8日のNY株式市場などは、それを受け反転上昇となったが、NY金市場は年末までの上昇に対する反動安の状況が続いている。 売りが先行しているのは先物市場でのファンドのネット買い残が(重量ベース)全体で1月2日時点で678トンと高水準に達しており、戻り売りが出やすい内部環境がある。
ちなみにファンドの買い越し残は、取引時間中の最高値を更新した12月初め(655トン)をやや上回る水準に達している。FRBによる早期利下げへの期待が、やや後退しポジション(持ち高)整理の売りが続いている状況にある。
こうした動きは一部のFRB高官発言や目先の経済指標の発表に伴った、利下げ期待の強弱の振れにファンドのアルゴリズム(売買プログラム)が反応してのもので、中長期的な見通しに沿ったものではないことに注意したい。足元の下げは想定内と言える。