金市場は昨年末までの為替市場のようにボックスにはまってしまっている。1280~1300ドルの狭いレンジ内での上下動、それもきっちり1290ドルを挟んだ展開の膠着状態に。
ドル・インデックスが高止まりし、値動きがないことによる。これはもっぱらNY先物市場に由来する動きだが、ここにきて現物の引き合いも高まっているようだ。先日触れたが久々に(2016年10月以来)中国人民銀行が外貨準備の金の持ち分を増やしていた。そしてまさに中国では、春節需要が高まる時間帯に入っている。ETFの残高もじわじわと増えている。つまり、内部要因は改善しているとみられるが、価格には反映されていない。もっとも、米政府機関の閉鎖の影響でCFTC(米商品先物取引委員会)のデータが昨年末12月22日以降発表が止まっているので、ファンドのポジションの移動の内容がつかめない。
ドル指数の膠着は、ユーロ(欧州)とドル(米国)の双方に売り材料が出て、弱さ比べになっていることがある。15日は、前日のユーロ圏全体の指標(11月の鉱工業生産指数)の悪化に続きドイツの2018年国内総生産(GDP)速報値が1.5%増と5年ぶりに低い伸びとなったことが判明、ユーロ売りの材料となった。四半期ベースでは10-12月期はプラスになったと見られ、マイナス成長となった7-9月期に続き2期連続のマイナスは回避、リセッション(景気後退)入りは免れたと見られる。
その一方で、発表された米国指標も弱かった。12月の米生産者物価指数(PPI)は、前月比0.2%下落し、2016年8月以来の大幅な落ち込みとなった。そもそも前月比での下落自体が2017年2月以来となるもので物価上昇圧力の弱さを示し、FRBに利上げを見送らせる材料となるもの。実際に、この日講演した米地区連銀のひとつミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、賃金や物価に関する統計からは「現時点で追加利上げを正当化するような圧力を示す兆候は見られない」とした。
同じ日にニューヨーク連銀が発表した1月の製造業業況指数も市場予想を大きく下回る内容だった。1月は3.90と12月の11.50から大きく低下、市場予想は10.75だった。2017年5月以来の低水準となる。もともと振れの大きい指標ではあるが、下向きに転じているものと思われる。
さて英国。離脱案の否決は織り込み済みで、その後の展開がどうなるのかが焦点。これも大方の予想シナリオにあった、内閣不信任案が野党・労働党から出され、足元で討論が始まっているようだ。日本時間の明朝に投票される予定だが、総選挙をしたくない向きが多いとされ不信任案は否決との見方が多い。そもそも、英国、EU双方ともに合意なき離脱は失うものが多く避けたいのが本音ゆえに、金融市場では「ハードはない」がコンセンサス。それゆえ緊張感のない展開が続いているのだが、一連の騒動を経て英国の地盤沈下は間違いなく進みそうだ。それでも金の保管庫はロンドンから簡単に移せない。