先物市場でのショートカバー(売り建ての買戻し)に加えETFという現物絡みの買いで反発した金だが、24日まで4連騰で24日のNY金の通常取引は1865.40ドルで終了となった。1850ドル処での売りをこなしたかたちだが、この水準を維持すればOK。本日の5月のFOMC議事要旨が、どうなるか。その内容に足元の動きからすると株式市場がどう反応するかも、ポイントになりそうだ。
24日までの金のサポートは、何といってもドルの下落が目立ったこと。直前までのドル独歩高の裏返しのような形で下落し、ドル指数は101ポイント台まで急低下する中で、金市場は買い優勢の流れが続いた。同時に米債金利も低下傾向を続け10年債利回りは、一時2.724%と1カ月ぶりの低水準を付け、それにもかかわらず株式市場ではハイテク株の構成比率の高いナスダック総合が大幅続落で年初来安値を更新。長期金利低下に加え、リスクオフで安全資産としての側面も注目され金に買いが集まった。
一時101.646と4月26日以来1カ月ぶりの安値を付けたドル指数(DXY)だが、前日に続きユーロ高が押し下げた。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁が、中銀預金金利を9月末までにゼロか「ゼロをわずかに上回る」水準にする考えを示し、現在の水準から少なくとも0.5%引き上げる可能性を示唆したことを受け、ユーロが上昇した。
さらにこの日発表された米国関連の経済指標がいずれも予想外の悪化を示したこともドル売りの手掛かりとなり金をサポートした。
米S&Pグローバルが発表した5月の米PMI(購買担当者景気指数)総合値(速報値)が53.8と1月来で最低となった。内訳(いすれも速報値)では製造業PMIは57.5と、4月59.2から予想以上に悪化し2月来で最低となった。サービス業PMIは53.5と、4月55.6から予想以上に悪化しやはり1月来で最低となった。さらに先週はNY連銀製造業景況指数やフィラデルフィア連銀製造業景況指数が予想外の落ち込みを示したが、この日発表された5月のリッチモンド連銀製造業景況指数も予想外のマイナスに落ち込み、2020年の新型コロナパンデミック来で最低を記録した。
ここにきて6、7月と0.5%の利上げを続けた後に9月は様子見で利上げナシと唱える地区連銀総裁も現れているが、広い米国ゆえに景気にも温度差があり、陰りの予感が生まれていることもあろう。
同じくこの日発表された4月の米新築一戸建て住宅販売戸数は前月比16.6%減の59万1000戸と、2020年4月以来の低水準となった。市場予想の75万件を大きく下回り、前年同月比では26.9%減となる。米住宅市場は活況が続いてきたが、住宅価格の高騰に加え米連邦準備理事会(FRB)による利上げを受けた住宅ローン金利の上昇の影響が、一気に表面化したといえる。22年に入り販売水準がじわじわと下がり始めていたが、今回の落ち込みは大きい。新築販売が住宅市場に占める割合は10%に過ぎないが、契約時点での統計となるため、住宅市場全体の先行指標として注目されるもの。米住宅市場は過熱が指摘されてきたが、減速が鮮明になったといえる。
5月のPMIの予想以上の低下が示す企業活動の減速に加え、景気動向を示す産業の1つである住宅市場の失速は、米国景気の勢いが鈍化しつつあることを示している。このところの大幅下落で株式市場の予想PERが低下し、割高感は解消されつつあるとされるが、今後景気悪化観測から業績見通しが低下するならば、株価の割高感は解消されず下げが続く可能性がある。
来月6月14~15日のFOMCはメンバー予測を公開する節目の会合ゆえに、政策方向を見る重要イベントゆえに株式始め金融市場にとってもゴールドにとっても節目のイベントとなる。それゆえに、ここ最近一連のパウエル議長はじめ連銀関係者の発言から思うのは、議事要旨は何らかの方向性を示唆するものになるのではと思っている。6月はQT(資産縮小)がスタートするタイミングでもあり、本日の議事要旨も株式市場にとっては優しくない内容になると思うのだがどうなるか。
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ベア入り間近のS&P500
反発するゴールド