を読む。プルタルコス著。ちくま学芸文庫。
スパルタの国制を創ったリュクルゴスの項が、おもしろい。
映画「300」にも出てきたが、スパルタでは障害を持って生まれた赤ん坊は、町はずれにある穴に捨てられる。ナチスの先駆けにも見えるが、実はこのような風習は、原始的な社会にしばしば見られるものだ。レヴィ・ブリュルの「未開社会の思惟」を読むといい。
有名な「スパルタ教育」。子供は7歳になると親から引き離され、あとは国家によって教育が行われる。ということはつまり、現代において親が「自分で」子供を厳しくしつけるのは、「スパルタ教育」ではないことになる。
教育の内容は、もっぱら体育、教養、弁論術。おもしろいのは、子供たちの食事の仕方だ。食料は、市民の共同食堂や農場から、盗んでくる。彼らは、自分たちで働いて食料を作ったりはしない。そもそもスパルタ市民は、労働を一切しない。それは奴隷がやることだ。市民がやるのはもっぱら戦争、セックス、雑談・・・等だ。で、子供が盗みに失敗して捕まると、厳しく罰せられる。それは「他人の物を盗もうとしたから」ではなく、あくまでも「盗みに失敗したから」だという。このような経験は、将来、敵地で掠奪を行う時に役立ったろう。
結婚制度も独特だ。掠奪婚が基本で、さらに「上品な乱婚」とでも呼ぶべき風習がミックスされる。既婚女性が気に入った男性は、その夫と相談して女性と交わり、子供を作ることができたのだ。
意外なことに、スパルタでは同性愛も公認されていたという。子供を産まない同性愛は国力を増進させないから禁止、となりそうなものだが、このあたり、一筋縄ではいかないのにゃ。
スパルタのライバルだったアテナイの英雄たちも出てくるが、彼らはすぐに民衆に飽きられ、追放される。その結果アテナイの民主政は衰退し、スパルタに敗れるのだ。まるで今の日本のようにゃ。