を読む。山内進著。講談社学術文庫。
「入るように強制せよ」。ルカの福音書のこの言葉をもとに、カトリック教会は十字軍を組織し、異教徒の征服に乗り出す。彼らが目指したのはエルサレムだけではなかった。キリスト教の普及していない東ヨーロッパでも、血で血を洗う戦いが繰り返された。
戦いの様相は酸鼻を極める。男は皆殺しにし、女子供は奴隷にし、財物を持ち去り、最後に火をつける。トゥーキュディデースが「戦史」の中で描写している紀元前5世紀のギリシャ人同士の戦いと、まったく同じだ。神の栄光に満ちた世とはとても思えない。
「哲学者や宗教者は生活についての考え方を変えたが、生活そのものを変えたことはいまだかつてない」。シュペングラー「西洋の没落」。
しまいに宗教上の目的は消え去り、領土の拡大だけが追求されるようになる。典型的なのが、宗教団体であり、戦闘集団であり、支配領域を持つ国家でもあったドイツ騎士修道会。彼らは、カトリックに改宗したリトアニアに対する侵略をやめず、ついに1410年、タンネンベルクで、ポーランド・リトアニア連合と激突する。その結果は・・・・・・。
学術書とは思えない生き生きとした描写で、一気に読ませる。日本人にはあまり知られていない、ヨーロッパ屈指の大国だった頃のポーランドの歴史もおもしろい。