を読む。ホルヘ・ルイス・ボルヘス作。岩波文庫。
「八岐の園」のこの部分は問題だ。「均一で絶対的な時間」? ショーペンハウアーはそんなことは言ってない。
彼は、「時間と空間は個体化の原理だ」と言っている。人は、生まれた時からそれぞれの「時間と空間」を持っていて、それによって世界を認識する。自分の「時間と空間」とともに生き、彼が死ねば、彼の「時間と空間」も消滅する。「時間と空間」は、まったく個人的なものだ。
「たとえ宇宙の果てにたどり着いたとしても、私がそこにいる限り、空間は存在し続けるだろう」。
だが、おそらくボルヘスは、すべてわかった上でこう書いているのだ。「八岐の園」のテーマは迷宮。実際とは違うショーペンハウアー像を作り出して、読者を惑わせるつもりなのだろう。