ユダヤ人とエジプト人の関係。
神は、モーセを通してユダヤ人に告げる。「家の鴨井と入り口の2本の柱に羊の血を塗りなさい。私はそれを見てユダヤ人の家を過ぎ越して(スルーして)、エジプト人の家の初子を撃つ」。実際、そうなった。恐れをなしたファラオは、ユダヤ人のエジプト脱出を認めた(出エジプト記12)。この記述からわかることは・・・。
古代エジプトにおいては、エジプト人とユダヤ人が入り混じって生活していた、ということだ。ユダヤ人だけがゲットーを作って暮らしていたわけではない。もしそうなら、特別な目印は必要ない。また、家の見た目では区別できないほど、両者の経済力は接近していた。なにしろ、生け贄として羊を屠ることができたくらいだから。
エジプトを出て荒れ野をさまようユダヤ人は、モーセとアロンに向かって不平を鳴らす。「エジプトでは肉のたくさん入った鍋の前に座り、パンを腹いっぱい食べられた。あなたたちは我々を飢え死にさせようとしている」( 出エジプト記16、3 )。
エジプトでのユダヤ人の生活は、それほどひどくはなかったらしい。
さらに、こんな規定もある。「エジプト人をいとってはならない。あなたはその国に寄留していたからである。彼らに生まれる3代目の子孫は主の会衆に加わることができる(祭儀に参加できる)」(申命記23、8~9)。
ユダヤ人はエジプト人に「隷属」していたのではなく、「寄留」していたのだ。「わたしはエジプトにいるわたしの民の苦しみを見、彼らの叫び声を聞き、その痛みを知った」(出エジプト記3、7)という神の言葉は、どうも怪しい。エジプト人を恨むどころか、特別な地位を認めてさえいる。
それでは、どうしてモーセは、ユダヤ人をエジプトから連れ出したのだろうか。それは・・・(つづく)。