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続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

大学英語入試改革【訂正あり】

2021年07月01日 10時29分18秒 | 日々のこと
記述式や民間英語試験を導入するという大学英語入試改革が頓挫しました。かなり長い期間をかけて話し合われて来たのですが、そもそもそんなに時間をかけて話し合うべきものだったのでしょうか。

これらを大学入試共通テストに導入すべしという提言が2013年2014年に教育再生実行会議(再生会議)と中央教育審議会(中教審)から出されました。

そのとき私は失礼ながら「アタマ大丈夫か?」と思ったものです。共通テストはおよそ50万人の受験生が受けるわけですが、そこに記述式を導入した場合、採点の安定性を担保できるか、採点者を十分確保できるかという大問題があります。

また民間英語試験の場合は、それぞれ目標が異なっていますので、日本の学習指導要領の流れとは合致しません。例えばTOEFLは非英語圏の受験生が、英語圏(主にアメリカでしょう)の大学教育に耐える英語力があるかを見るテストですし、日本の英検でも文部科学省認定※ではあっても学習指導要領完全準拠ではありません。それに全国50万人が受けるとなるや必ずそこに利権が発生してまた良からぬことが起こるというのは想像に難くないです。

これらのことは専門家なら即時、そうでない方でも少し考えれば「否」の結論が出ます。「改革」はグローバル人材育成などという耳障りのいいことばとともに提言されてくるわけですが、まったく理想の空回りです。この大学入試改革以外にも「理想空回り提言」は今までにも何度かありました。

私が直接知っていることで言えば、学習指導要領を作成する有識者会議(協力者会議と呼ばれていました)で、どういう方向で学習指導要領を改訂していくかの方向性を座長から聞いたとき、「え?なんで?もっといい方法があるやろ」と思ったものでした。その「もっといい方法」を考えるのがこの有識者会議ではなかったのかと思っていた私は驚きました。そのことを座長の先生に尋ねると、中教審の答申に基づいてこの会議を開くのだから、その方向性については変えられないとのことでした。

こんな無茶ぶりを提言してくる中教審のメンバーとはどんな人たちなんだろうと思って調べてみましたら、何と英語教育の専門家はひとりもいらっしゃらないのです。メンバーは企業のトップやマスコミな名が知られている方が中心なのです。

企業のトップの方がご自身の経験から英語の必要性を痛感されて、やはりしゃべれる英語が必要だ、今の学校英語教育はなっとらん式の発言をされるのをよく聞きますが、そのレベルの意見をまとめたもののようです。

教育改革のトップに立つ人が専門家でないのは由々しき問題です。中教審や再生会議で専門家による討議を重ねて提言すれば、無茶ぶりはなくなります。8年近くに及ぶ時間を浪費せずに済んだのです。無理とわかっていることをゴリ押しするみたいな提言は、不透明感満載、記述式対策指南業者、民間英語テスト業者の暗躍が裏にあったのではと勘ぐってしまいます。

中教審にしても再生会議にしてもメンバー選定方法を改革しなければ正しい方向性を得ることはできません。もっとマシな提言を。真の教育改革はここです。

※【訂正】英検は2005年から文部科学省「後援」になっています。